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ペンシルバニアにある森に囲まれたちっぽけな町に、俺の通っていたペンシー校はあった。その町の八割方の敷地はペンシーのものだった。盛ってないぜ。町はその学校のためにつくられたようなものだった。DQも、ウェンディーズも、タコベルもあった。ああ勿論、図書館だとか、俺らの住んでる寮だとか、そういう学校の建物もあるよ。ただ、そういう類いの俗物も学校の敷地内にあったんだ。それぐらい、俺らの学校はいわゆる"プレップスクール"だったってわけ。簡単にいえば、難関大学に合格するだけの頭をもつ子供を量産するために、ペンシーは逸脱した規模の教育と生活を提供していたんだ。




「ゴウ。おまえ、歴史のミスター・ヒガシに挨拶には行ったのか?」



ルームメイトのツヨシ=ストラドレイターが、出窓のちょっとしたスペースに腰をかけそう聞いてきた。俺は傷まみれのトランクに衣類を詰める手を止め、ツヨシの雪焼けした赤い顔を見た。



「いいや、まだだ」

「行っといた方がいいんじゃないか?試験に落ちたとはいえ、最後までお前のことを気にかけてくれてたのはミスター・ヒガシだろう?」

「まあな。でも時間がないんだ。これからビジネスオフィスに行って色々手続きしなくちゃいけない」



ツヨシは俺の返答が気に食わないのか、「あのなあ」と眉をひそめる。俺は立ち上がりツヨシの追撃をまぬがれようとした。



「おい待てよ。あとお前、国語の作文は終えたのか?」

「え、作文?」

「忘れたのかよ。放校の可能性が九割九分だったとしても、やっといて損はないぜ」

「だりいなあ。テーマはなんだっけ?」

「『己の生涯において意味を成す物』。二千字でダブルスペース、APAスタイル。最悪ではないだろ?明日の朝が〆切だけどな」

「悪くないな」



俺は部屋用のフリップ・フロップから雪道用の登山ブーツへ履き替えた。これから猛吹雪の外を半マイルほど歩いて、落第科目の登録をしに行かなければならない。



「ゴウ、お前、野暮用があるなら俺がやってやってもいいぜ。30ドルで引き受ける」

「高い。25ドル」

「27ドルでどうだ?今日の夜中までには終わらせるよ」

「生憎今1ドル紙幣を持ち合わせてないんだ。ちょっきり25ドルなら雇ってやるよ」

「チッ、暴君。その代わり前払いだ」



俺はしわくちゃの紙幣を、埃まみれのツヨシのベッドランプの横に置いた。ツヨシはそれを確認すると、俺に目もくれず、明日の小テストのために暗唱を始めた。

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ふき(プロフ) - お疲れ様です。原作とは違う切なさが、翻訳調相まって楽しませて頂きました。写真も臨場感たっぷり。舞台化して欲しい!サカモトくんとゴウが出会う場面がとても好きです。シュガーちゃん達のお話も続きをお待ちしております。 (2018年4月29日 19時) (レス) id: ada8638135 (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - ふきさん» ありがとうございます!トニは尊すぎて書くには覚悟と下準備がいるんですよね笑。参考にさせていただきます! (2018年4月6日 23時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
ふき(プロフ) - 捕手には、なれずモラトリアムの闇に、沈んでいた日々。若さと折り合いが悪かった時代を思い出しました。若さって痛みを伴いますよね。楽しみに読ませて頂きます。厚かましいですが、トニにも是非いい物語を!個人的には「スモーク」如何でしょうか。 (2018年4月5日 19時) (レス) id: ada8638135 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まお | 作成日時:2018年4月4日 7時

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