転生人生 (ページ6)

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10月４日、午前２時34分＿＿＿＿＿

とある病院の一角にある手術室からは元気な赤ちゃんの泣き声が響いていた。

それと同時に手術室の前で祈るように手を組み、少しうつむき加減で座っていた男性は顔を輝かせた。

その顔は限りない喜びに包まれ、
無事に子供が生まれた事、
そして中から聞こえた看護婦の
「お母さん、もう大丈夫ですよー」
という妻の無事を確認できたという安心をもろに写し出しているような表情だった。

その夫が妻と子供に会えた時にはまだ少女の面影を残していた妻が優しい顔で子供を見つめる立派な母親になっていた。

「…名前は何が良いかしら」

囁くように言った妻に夫はにこりと微笑んで、

「陽向、なんてどうだい？」

と言った。

その言葉を聞いた彼女は赤ちゃんを抱くと、まるで歌うようにして呟いた。

「陽向。……貴女は今日から姫川陽向よ」

赤ちゃん＿＿＿＿陽向は、麗らかな日射しと優しげな両親の目線に見つめられながらウトウトと眠りについた。

…そんな二人の愛娘である陽向に異変が起きたのは、陽向がちょうど三歳の誕生日を迎える頃のことだった。

陽向はその幼い体に重い病気を宿し、助かる事すら分からないと言われた。

両親も、自分より１つ下の妹を可愛がっていた兄達も酷く悲しんだ。

どうにか一命をとりとめた陽向だったが、後遺症として体が弱くなり、初めの頃は歩くことすらままならないくらいの状態に陥ってしまった。

そんな状況ながら、もう意識をしっかりと持っていて精神年齢が20歳近い今は陽向である当事者が一番冷静に状況分析していたとは露知らず、家族は陽向の生存を大いに喜んでくれた。

そうしてようやく、神様の思い描いた姫川陽向の人生が始まったのである。