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謝罪 ページ1

No side

【21:15――拠点、地下5階一室】

10畳程の広さの一室。
A達が研究室を出て地下4階に向けて出発し、赤井らが5階に通じる階段の暗証番号を解いている頃。

それを自身のスーツの襟口に仕込まれたマイクから聞き取って確認し、1人椅子に座っている女ーーベルモットは、マイクの音声を切った。
袖口の小さなスイッチで簡単にオンオフできるそれは、他の組織壊滅メンバーも同様に可能である。

「…さて、そろそろね」

拠点の地下5階は、"あの方"が来た時に最奥にある部屋を利用するフロアだ。

基本的にそれ以外の用途はないとされているが、実はここにはベルモット専用の部屋が設けられている。ジンらもそのことは知らない。

そもそも、このフロアはどこを見渡してもドアがないのだ。

階段と同じく、壁の決まった位置を一定の力で叩くことで、暗証番号と指紋認証を要求するパネルが現れる。それをクリアすれば、すぐ隣の壁が開く仕組みである。

フロア内の部屋は、4つ。

ベルモット専用の部屋。
"あの方"が利用する部屋。
"あの方"の部屋とモニターで繋げられ、ジン達幹部が"あの方"に謁見するための部屋。
もう1つは、幹部が"あの方"に謁見する際の控室的な役割のもの。

最後の2つ以外は、ベルモットと"あの方"しか開けられない。部屋の場所、それに伴うパネルが仕込まれた壁の位置、暗証番号、登録されている指紋。それらについて探りを入れる人間は、そうそういない。

一度ジンが勘繰ったが、ベルモットの殺気に断念した、というのは構成員の間での噂だが。なかなかどうして、それが事実なのだ。

銃の弾数を確認し、ジャケット裏に仕舞う。パソコンの電源を落として立ち上がり、コピー機から出ていた紙を手に取った。

ざっと視線を走らせて内容に満足したのか、それを折って丁寧に封筒に入れ、机の鍵付き棚に滑り込ませる。小さな鍵を差し込んで回し、そのまま鍵を根元から折った。
ベルモットの手には、先端のないかつて鍵だったもの。それの相方だった銀色は、棚の鍵穴から覗いている。

これで、机を解体するか、相当の馬鹿力でもない限り棚が開けられることはない。

「ただ見守るだけのつもりだったけど…ここまで来たら、引き返せない」

ベルモットは小さく、本当に小さく呟いた。

「幸太郎、ルーク、レベッカ…ごめんなさい。私…私達、本当に馬鹿よね」

薄く微笑んで、ベルモットは室内の電気を消した。

暗がりの中、彼女の頬に一筋、キラリと光るものがあった。

最終→



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神娜(プロフ) - とても面白いです!夢中になってずっーと、読んでます(笑)!!次の更新楽しみにしてます!続きが気になるので、時間があったらでいいので、待ってます!! (2020年7月10日 16時) (レス) id: aef303f40c (このIDを非表示/違反報告)
Liz(プロフ) - とても面白いです!一気読みしてしまいました!主ちゃんと新一がどうなるのか、組織はどうなるのか!続きが気になります!お時間空いたときで大丈夫なので、更新してくれたらとても嬉しいです!待ってます! (2020年6月14日 18時) (レス) id: 981ff12ec5 (このIDを非表示/違反報告)
萌奈 - とっても面白かったです!もう更新はしないのですか?ずっと待ってるので、時間が空いたらでいいので更新してくれたら嬉しいです!待ってますよ! (2020年3月29日 22時) (レス) id: 08309c157f (このIDを非表示/違反報告)
れい - うわー、作品一気読みしてしまいました、もう更新はしないのでしょうか…?待っているので時間に余裕があるときにでも更新してくれたら嬉しいです。待ってます!! (2019年5月3日 14時) (レス) id: 31d6edb3af (このIDを非表示/違反報告)
緑間大好きっ子(プロフ) - 原作沿いも見てみたい (2018年4月29日 10時) (レス) id: c36a14bd0b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ナガレ@元kaka x他1人 | 作成日時:2017年2月20日 16時

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