子育て２９日目 ページ32
焦凍が風邪を引いた。
最近よく咳をしていたし、鼻も詰まった風だったから、まさか、とは思っていたけれど…完全に油断していた。
「焦凍、大丈夫？」
焦凍の部屋へ入って、作ったおかゆを脇に置く。聞いたものの、とても大丈夫そうには見えない。
「だい、じょうぶだ」
「…一応聞くけど、おかゆ食べれる？」
そう問うと、焦凍はだるそうに間を開けて、
「…わりぃ」
と眉を下げた。
中身は２３歳とはいえ、今は５歳のか弱い子供。今一番辛いのは彼なのに、こんな顔をさせてどうする。少し自分を責めて、しゃーない、と笑った。
「ほら口、開けて」
「？」
「あーん」
「？！」
「ちょっと、なんで逃げるの」
焦凍が大丈夫かとでも言うような目で私を見た。いや今一番大丈夫じゃないのはお前だよ。
「…はやく開けてよ、私もちょっと恥ずかしい」
「…そ、うか」
「なんで嬉しそうなの…」
百ちゃんと焦凍の件以来、私も少しずつ自分の気持ちを整理できていた。焦凍は幼馴染みで、ずっとそばに居てくれて。けどそれは幼馴染みだから、じゃない。私をずっとすきで居てくれたから、そばにいてくれたのだろう。…私はそれにはやく応えたい。きっと答えはもうすぐそこだ。
焦凍が小さな口でスプーンにかぷりとかじりついた。私は一旦思考を留めて、首を傾げる。
「おいし？」
「…わかんねえ」
「だよね。
次はもっと味こ…く…………な、なんでもない…」
「？」
言葉を途中で切って、なかったことにした。
次、ってなに。次焦凍が風邪を引いたとき、そばに居るのは私じゃないかもしれないのに。そんな、次も私がそばにいるみたいな、そんな、やだ、わたし、ほんとうに？
「ゆ、ゆっくり休んで」
思考を振り払うように、私は慌てて立ち上がろうとした。すると、焦凍が私の袖をぐいと引いて、そのままぎゅ、と握る。
「……いっちまうのか」
「っ…」
寝転んでいるせいで彼は必然的に上目遣いになってしまって、余計に焦凍の顔が寂しそうに見えた。
「…じゃあ、寝るまでね」
「おう、ありがとう」
「うん。おやすみ」
「おやすみ。
…あ、つぎおかゆつくるとき、もっとしお多めにいれといてくれ」
「はいはい、ってえ？」
……穴があったら入りたい、そして入口を閉めてくれ。出来ればそのまま草木を肥えさせる物質になりたい。
火照る頬が引いても、焦凍はそれきり何も言わずに寝てしまった。
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七香様、リクエストありがとうございました！！
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斑杏(プロフ) - ハイホーさん» 素敵だと言ってくださってありがとうございます！ハイホーさんのように最後まで待っていてくださった方々の賜物だと思ってます。本当にありがとうございました！ (2019年12月31日 10時) (
レス) id: 7c4ca50f60 (このIDを非表示/違反報告)
ハイホー(プロフ) - 素敵な物語を完結してくれてありがとうございます。お疲れ様でした！ (2019年12月30日 4時) (レス) id: f4fc8fdd6d (このIDを非表示/違反報告)
斑杏(プロフ) - 鈴木美妃さん» お返事大変遅れて申し訳ございません！！ファンだなんてそんな…ありがとうございます！更新頑張ります！！コメントありがとうございました！！ (2018年9月18日 19時) (レス) id: 757faf627b (このIDを非表示/違反報告)
鈴木美妃(プロフ) - ファンになりました。早く続きが読みたいです。これからも更新楽しみにしてます。頑張って下さい。応援します。 (2018年8月17日 7時) (レス) id: 6d5e66c80d (このIDを非表示/違反報告)
斑杏(プロフ) - 月華姫さん» お返事大変遅れて申し訳ございません！！！応援ありがとうございます！！！リクエスト承りました！！ちょっと映画で再熱してきたので、ちまちま更新しようかと思いますwコメント・リクエストありがとうございました！！ (2018年8月11日 0時) (レス) id: 757faf627b (このIDを非表示/違反報告)
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