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Genta side
貰ってしまった。
お世話になっているスタッフさんからチョコレートを。
緩く巻かれた栗色の髪を揺らして笑うスタッさんは誰が見ても可愛いけど、俺の頭に浮かんだのは別の人だった。
頬を染めて言葉を並べる彼女には申し訳ないが半分以上頭に入ってない。
誰だってチョコレートを貰えるのは嬉しい。
現に手の中に可愛くラッピングされた手作りのチョコレートは俺を優越感に浸らせていて。
でも貰うのはあいつからだけでいいとも思う。
あいつを独り占めしたい。
あいつの可愛さは俺だけが知っていたい。
なんて。
無理だって分かっていてもそう願わずにはいられなかった。
思考があいつで埋め尽くされて幸せの感情に侵食される。
気付いたら彼女は口を噤み俺を見上げていた。
有難うございますと言って丁寧に頭を下げた。
スタッフさんは満足気に立ち去り残された俺は撮影に向かった。
カメラの前でかっこよく笑って頭の中はあいつでいっぱいだった。
いつ貰えるんだろう。
俺より撮影は先だったから楽屋に戻ってからかな。
そんな事ばかり考えていたら撮影は終わっていて、
宮近くん、呼んできてもらえる?と言われたので了解ですと言ってスタジオを後にした。
楽屋に戻るとちゃかはソファで寛いでいて、
目の前には青色の四角い箱が置いてあった。
『たっだいまー!次ちゃか撮影だって』
「おう、サンキュー」
『ねね、ちゃかも誰かからチョコ貰ったの?』
「も、ってことはお前も貰ったの?」
『うん!スタッフさんにね!』
ちゃかはなるほどね、と呟いて微かに笑った。
「これは、松倉から貰った」
『は?』
「松倉は自分用に買ったって言ってたけど、こんな青色の箱のチョコレート、相手なんて決まってる様なもんだよな?」
言ってる意味、分かるよな?とでも言いたげに鋭い視線を向けたちゃかは俺に箱を押し付けた。
「痴話喧嘩とお前に恨まれるのだけは勘弁」
そう言って楽屋を出て行った。
俺は押し付けられたは箱を潰してしまいそうな程に強く握りしめた。
『...海斗』
大急ぎで荷物を纏めて楽屋を飛び出した。
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作者名:ほのぼん | 作成日時:2021年2月10日 23時