不安 ページ23
新星が右膝を押えて倒れた。
｢新星！！！｣
名前を呼び、駆け寄るも呻きながら膝を抱えている。
俺たちのエースが、囮が、大黒柱が、
痛みに耐えている。
頭が真っ白になった。
大きな怪我なんじゃないか、
バレーを続けられないんじゃないか、
そんなことばかり頭に浮かんだ俺たちを他所に
担架に乗せられた新星だけが試合のことを考えていた。
｢負けんなよ。｣
｢お前たちならぜってぇ勝てるから。｣
痛いはずなのに、痛みでおかしくなりそうなくらい苦しいはずなのに。
運ばれていくエースの姿を見送り、
俺たちだけが残る。
｢おい、試合だぞ、南。｣
｢新星くん、大丈夫かなぁ｣
｢…北斗、東。｣
｢3年せいもいない、新星もいない俺たちに何が出来る？｣
近くに来た北斗と東に疑問をぶつける。
何言ってんだみたいな顔をする北斗。
｢そんなの、やってみなきゃわからん。｣
｢そっか、そうだよね。僕たちにできることって次まで繋げることだよね。｣
腰に手を当てて北斗が
｢あいつに特等席を用意する、それぐらいなもんだろ。｣
いない人、変えられない現実をなげいてもどうにもならない。北斗が言いたいことはそういうこと。
｢…行くしかねぇか、頂点まで。｣
1人欠けた3人で拳を前に。
新星の場所は空けたまま。
｢｢｢…行くぞ、俺たちは自由だ。｣｣｣
ーーー
ー
1-2の4セット目
18-23
やはり俺たち3人揃ってても、
新星という大きな穴は塞ぎようがない。
レシーブも上手い、セッターとしての才能もある、ブロックも考えて動く鉄壁、スパイクは砲弾。
努力で全てを手に入れてきたアイツに俺たちは到底及ばない。
俺たちは俯いていた。
上をむくスポーツで、下を。
新星に合わせる顔がない。
｢ボールを追えよ！！！！｣
突如聞こえた、よく知ってる声。
｢お前らは自由なんだぞ！！！！｣
ギャラリーに紛れて聞こえる。
どこにいるかは分からない。
でも、新星はいる。
｢2人とも、合言葉覚えてるよな。｣
俺の声にふたりが頷く。
｢あれ、やるぞ。｣
｢おっけー、僕頑張る。｣
｢任せろ、得意だ。｣
ーーー
ー
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 345人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
肺の燻製(プロフ) - 703さん» 703様からのコメントに作者の私の心もしっかりと鷲掴みされてしまいました。コメントありがとうございます。ぜひこれからも楽しんでいただければ幸いです。 (3月17日 13時) (
レス) id: f1877497e8 (このIDを非表示/違反報告)
703(プロフ) - コメント失礼します作者様の巧みな文字の動きに毎回心を鷲掴みです！ワクワクが止まりません！新星くんがとってもカッコよくて安定感を持っていながら南くんや東くんなどのキャラもしっかりと作り込まれてい応援が止まりませんとくに最新話の2年生4人に痺れました！ (3月17日 2時) (レス) @page4 id: 122d3150cd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：肺の燻製 | 作成日時：2024年3月16日 18時
