転生 ページ19
対白鳥沢戦。
牛島さんがいるわけないのに。
勝てないんだよね。
夕先輩がたくさん繋げてくれたボールを
俺たちが得点にできなかった。
またしてもブロックが高かった。
相手のレシーブを欺けなかった。
相手を崩せなかった。
最後のツーを拾えなかった。
泣いている3年生を見て、
俺は悔しさと申し訳なさでいっぱいだった。
｢ナツメー！！！｣
下を向いていると、背中を強く叩かれた。
俺はこの人のことをよく知っている。
｢なんですか、夕先輩。｣
｢お前よく頑張ったな！｣
眩しい笑顔が俺の心に突き刺さる。
｢…でも……｣
負けたじゃないですか。
その言葉を口にするのは、どうしても嫌だった。
｢そうだな、負けたな。それは悔しい！
でもそれ以上に俺は楽しかった！それはナツメたちのおかげだ。｣
少し屈め、と言われ夕先輩の目線より下になるよう、床に膝をついた。
｢あんがとな！｣
汗まみれの髪を躊躇いもせずに撫でる夕先輩。
ありがとうが心に染みる。
思い出も蘇る。
目頭が熱くなり、視界にモヤがかかったように歪み
鼻がツンと痛くなり鼻水が垂れてくる。
｢おいおい、お前でも泣くんだな。｣
抗うことも無くそのまま涙を流した。
｢…次は、…負けません。
先輩たちの分も、…っ、絶対に……俺は勝ちます。｣
先輩たちは卒部する。
｢おう！頼んだぞ！｣
夕先輩も。
受け入れたくない。
受け止めたくない。
考えたくない。
それでも現実は進む。
時間は止められない。
止まってくれない。
待っててくれない。
｢夕先輩、…こんなに手のかかる俺を、っ…自由に動けるようにしてくれて、…後輩として、っ、可愛がってくれて、……ｯあ”りがとぅ、、ぅｯｯ、っ…ございました！！｣
伝えたいこと、言いたいこと、話したいこと
それはまだまだたくさんある。
でもそれは今じゃなくていい。
今は大事なことだけ、感謝していることだけ伝えよう。
床についている膝に手を置いて、上半身を曲げる。
重力に従い溢れた涙は床に落ちる。
｢…ぅｯ…くっ…ｽﾞﾙｯ、はぁっ…うぅ…｣
唇が切れるほどかみしめて、
泣いている俺の傍で、夕先輩はずっと頭を撫でてくれた。
｢俺はお前の先輩で、…楽しかったぜ｣
夕先輩も泣いていたのは、秘密。
｢…ｯ俺も、…ずっと…ッ…夕先輩の後輩で、ッ…｣
｢うん。伝わってるぜ。｣
幸せです。
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肺の燻製(プロフ) - 703さん» 703様からのコメントに作者の私の心もしっかりと鷲掴みされてしまいました。コメントありがとうございます。ぜひこれからも楽しんでいただければ幸いです。 (3月17日 13時) (
レス) id: f1877497e8 (このIDを非表示/違反報告)
703(プロフ) - コメント失礼します作者様の巧みな文字の動きに毎回心を鷲掴みです！ワクワクが止まりません！新星くんがとってもカッコよくて安定感を持っていながら南くんや東くんなどのキャラもしっかりと作り込まれてい応援が止まりませんとくに最新話の2年生4人に痺れました！ (3月17日 2時) (レス) @page4 id: 122d3150cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：肺の燻製 | 作成日時：2024年3月16日 18時
