高専生田中の日常 (ページ25)

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田中ページ25

『出会えて仲良くなれて良かったっす。』

田中の覇気のない声が通る。

金の斧は消え、一冊の分厚い本が田中の前に現れる。

呪術師は少しの感情で呪力を増幅させたり抑制する訓練をする。
これは感情が大きくなった時に呪力を無駄にしないようにするための訓練である。

そして呪力とは負の感情から生まれる。

田中は心で嘆いた。

間に合わなかった、変えられなかった、役立たず、自分が憎い、自分が悪い、もっとちゃんとしていれば、もっと呪力を上手く扱えたら、もっと強ければ、五条悟のように圧倒的な強さがあれば、、…。

田中の呪力が、普通では扱えないほどに増えていく。

『領域展開。』

『誰ガ為ノ物語(だれかのおはなし)・赤い靴(アンデルセンのカーレン)』

田中のよく通る声が聞こえたと同時に、
田中と土地神は領域の中へ。

｢田中！！！！｣
｢あなたはまたそんなことを！！！｣

『ばいばいっす！』

田中はにかーっといつものように笑う。
そして合わせて大きく手を振った。

ーーー
ーー
ー

田中は領域の中に消えた。

ボロボロの体で、自分らが来た時には壁にめり込みあちこちから出血もあった。

いつもは結われている髪も解け、
言葉通り満身創痍だった。

そんな彼女は自分らのために体を張っている。

自分らが帰るわけが無い。

一番は、怪我をしている田中を回収するため
そして万が一、億が一田中が敗れ呪霊が出てきたら払うため。

両方の可能性を考え待機する。

きっと灰原も同じ考えでしょう。

｢七海。｣

｢ええ、わかっています。｣

わかっていますよ。

生きて戻ってきなさい、田中。