鬼神 ページ3
5年前の夏。
自分たちが蒸された野菜のようにくたくたになるほど暑くじめっとした夏真っ盛りの日。
その暑さが夜にまで続いた日だった。
五条は廃墟にいた。
「クソみたいに暑いってのに、こういうとこはすずしいよね。」
彼は特級呪術師となり、
目には包帯を巻いている。
少し湿ったひんやりと肌にまとわりつく空気。
臆することも無く足を踏み入れ
散らばる瓦礫も難なく踏み砕き、歩いていく。
肌で感じる呪力。
「さて、……」
その呪力の元へ歩みを進める。
ーーー
ー
お目当ての呪霊は
人型の特級になりたてのやつ。
「どうもこんにちは、いや、こんばんはかなーーー。」
その呪霊の右後ろに
【ソイツ】はいた。
包帯を捲り、
【ソイツ】が黒閃を放つ瞬間だった。
全体重を拳に乗せて。
背後から黒閃を繰り出す寸前まで呪力を一切出さず、
気配を消していたのだ。
だから五条も気付かなかった。
黒閃を放った後の1秒にも満たない時間の一瞬
爆発的で暴力的な呪力を感じた。
その一瞬の後、【ソイツ】は呪力を文字通り消し、
残穢すら残さず消えた。
「………なんだ、あいつ。」
あれは呪霊なんかじゃない。
そして僕は
いや、
俺はあの呪力を
「……なぁんだ、…君だったんだ。」
「……ソラ。」
気配も音も何も無い空間に
五条の力のない声だけが小さく呟かれた。
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hina(プロフ) - おり.ふら立ってますよ! (1月31日 17時) (レス) id: 9425f0e88a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:肺の燻製 | 作成日時:2024年1月29日 21時