黒田ん子番外編(ジョ伝時空(微ネタバレ注意)) ページ6
「長政様に会ったんやね」
「…ああ」
自分が本丸に来る前の記録を眺めながら城井兼光はポソリと呟いた。長谷部は表情の見えない彼女を一瞥し一言返事を返した。本来、刀剣男士たちと過去の人間は会ってはいけない。けれどこの任務は例外だったのだろう。
「抜け駆けのようなことをしたことは謝る」
「別に、怒っとるわけじゃなかよ」
羨ましいけどと寂しそうに笑いながら城井は記録を閉じた。任務が行われたのは小田原征伐の時。その頃すでに彼女は『城井兼光』であった。だが…。
「長政様の御前に、
大業物であると自慢してもらったこの身が女の姿であるとあの方が知ったらどれだけがっかりされることだろうか。
「…そんな方ではないだろう。長政様は」
「わかっとる。私が怖いだけやけん」
全ては過ぎたことだ。今更どうこう言ったところであの時代は改変を免れ、時代の通路は閉ざされた。
「長政様は、どげんやった？」
「そう、だな」
長谷部は庭を眺める。城井もその横に立った。庭には審神者に無理を言って買ってもらった小さな藤棚がある。まさに満開を迎えた藤の花が風にサラサラと揺られていた。
「相変わらず、お優しい方だった。俺に死ぬなと、また生きて会おうと言ってくださった」
「うん。長政様は、そういうお方」
藤の香りが鼻をくすぐる。春の終わり、夏の始まり。夏は城井にとっての別れの季節。けれどこの本丸に来てからは寂しさはもう感じない。
「ねえ、長谷部」
「なんだ」
「抱きしめてよか？」
弾かれたように長谷部は後ろに下がった。
「な、何を言い出すんだ！」
「聞いたっちゃもん。長政様に抱きしめられたって」
正直ずるい、間接ハグたい。と城井は両手を広げてジリジリと長谷部に歩み寄る。
「馬鹿たれ！こんなところで！！」
「ここじゃなかったらよかとね？」
「そういう問題じゃない！誰だこいつにそんな部分までばらしたの！」
日本号か、博多か。おそらく前者であろうと長谷部は後ほど鉄拳を喰らわせることを決めた。
「長谷部！」
その前に不満げにこちらを見据える少女をどうにかせねばならない。
(人の気もしらんでからこいつは)
「…来い」
「うん！」
パッと城井の顔に花が咲く。ギュッと長谷部の体に腕を回し、小さな声で以前の主の名を恋しそうに呼んだ。
「…敵わんなぁ」
敵うわけもない。だがいつか同じぐらいの、いや、せめて一歩後ろぐらいの位置において欲しいものだ。
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time rain(プロフ) - 返事がない只の屍のようだ。さん» 初めまして。こちらこそ読んでいただきありがとうございます！さらに公式で兄さんが増えてしまった城井ちゃんの攻略は上がるばかりですね。長谷部は大変ですw (2021年12月23日 9時) (
レス) id: f96f3e1548 (このIDを非表示/違反報告)
返事がない只の屍のようだ。 - 初めまして！頑張れ！シュメイアラバー！！と応援しながら一気に読みましたw(*´∇｀*)素敵な萌えをありがとうございます！！セコムさんや小さい兄さんらも大好きですv(*^ω^*) (2021年12月21日 14時) (レス) @page8 id: 2157a47614 (このIDを非表示/違反報告)
のっぺらぼう - 心から続きを所望するのですが、どうか最後まで作品を完成させていただけませんか？ (2020年2月8日 15時) (レス) id: a6daf906d1 (このIDを非表示/違反報告)
のっぺらぼう - どうも、続きが楽しみで仕方がない民です。長谷部推しなのでこの小説はやばいです(褒め言葉) (2020年2月3日 4時) (レス) id: a6daf906d1 (このIDを非表示/違反報告)
time rain(プロフ) - カコさん» アイデアをありがとうございます！水族館いいですね！しかも、パフェアーンですと！？「黒田」と考えれば微妙ですが、「長船」と考えればやりかねないですね笑。参考にしてみます！！ (2018年11月30日 16時) (レス) id: f96f3e1548 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：time rain | 作者ホームページ：http://id34.fm-p.jp/455/sigureneko/
作成日時：2018年11月23日 9時
