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不思議な場所にいた。
水の中にいるのに炎に包まれているような、炎の中にいるのに水底へ沈んでいくような不思議な感覚だった。でも、苦しくはなかった。炎も水も、刀である蘇芳にとっては何も怖い場所ではなかった。
むしろもっと深く、深く沈んでいきたいとすら感じた。
けれど、右手に感じる誰かの手の気配にそうすることができなかった。この手を振り解くことが蘇芳にはどうしてもできなかった。
「だれ？」
蘇芳の手よりもずっと大きくてずっと骨っぽくて。でも暖かい手の気配。見えなくても蘇芳が水底へ落ちていってしまわないように支えてくれていた。
蘇芳はチラリと下を見る。突然、無限に続く底が恐ろしくなった。
「戻らなきゃ」
繋いでくれている手を引き寄せる。そちらへ戻りたいのだと両手で包み込んだ。瞬間、体がグイと水面へ引き上げられた。
目を開ければ静かな部屋の中だった。木と畳の匂い。遠くから誰かが遊ぶ声が聞こえる。
本丸に戻ってきたのだと蘇芳が認識するよりも早く、視界に移っていた天井を遮るように誰かが覗き込んできた。
「目ぇ覚めたか？」
「…ぶぜ、ん？」
「おう。手入れはもう少しかかるってよ。だからまだ寝てていい」
「ん…けほっ」
いつから眠っていたのかわからないが、体はカラカラだった。小さく咳き込んだ程度だったが、二人きりの部屋でその音は随分と大きく聞こえた。
「水あるけど飲むか？」
「のみたい」
「雲と雨が用意してくれてて助かったな」
右手から温もりが消えた。そこでようやく豊前が右手を握ってくれていたのだと気がついた。
豊前の腕が蘇芳の背の下に入り、ゆっくりと上半身を起き上がらせる。温くなった水の入ったコップを受け取り、一口、また一口と喉を潤した。
「もう大丈夫」
「ん。また飲みたくなったら言えよ」
豊前に支えられながら再び布団に沈んだ。
「主様は？」
「隣の部屋で蘇芳の本体の手入れしてるところだな」
「謝らな、きゃ」
蘇芳は襖の方を向き、ポツリと呟いた。その呟きに豊前が眉を顰めたが、蘇芳は気がつかない。
「敵を、逃してしまった。あと、少しだったのに」
「蘇芳……」
何か声をかけてやろうと豊前が口を開いた所で、襖が勢いよく開かれた。
「謝る必要はないよ蘇芳江」
「主様……」
「すまない豊前。外してくれるかい」
「わかった」
また来ると言って豊前は出て行った。残された蘇芳は審神者を見上げる。
「少し話をしようか」
審神者は布団の横に座った。
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yuuuuui_0131(プロフ) - 更新ありがとうございます！！本当に大好きです！！無理せずに更新頑張ってください！応援してます！！！！ (6月8日 21時) (
レス) @page23 id: 8c737f26a1 (このIDを非表示/違反報告)
time rain(プロフ) - らむさん» らむさんありがとうございます！あまり更新頻度は高くありませんが、完走できるよう頑張ります！ (2022年1月5日 9時) (レス) id: f96f3e1548 (このIDを非表示/違反報告)
らむ(プロフ) - 凄く好きです…！！！！更新を楽しみにしています！ (2021年12月28日 16時) (レス) @page6 id: 39bdeb846c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：time rain | 作者ホームページ：http://id34.fm-p.jp/455/sigureneko/
作成日時：2021年12月19日 12時
