消したい過去を、 ページ9
Aちんをベンチに座らせて、一つ息を吐く。
『あ…あの、』
一「三好一成、21歳!」
『は?』
未だに冷静じゃない頭の中に、やっとのことで絞り出した言葉を吐く。
一「8月1日生まれで、星座はしし座!」
『い、いや、聞いてないけど、』
名前、年齢、誕生日、星座。
多分、てか、絶対。
どうでもいいことだろうけど、1度言い出したら止まらない。
一「天鵞絨美術大学日本画専攻で、満開カンパニーって劇団で演劇してる!」
『え、演劇…?』
一「…そんで、高校入るまでは、友達は一人もいなかった」
『…』
一「俺ね、ガリ勉だったの。陰気でさ、自分の意見言うの嫌いだった。でも、絵に出会って、高校で頑張ってイメージ変えて、気づいたらそれが素になってた。…想像出来ないっしょ?」
『……うん』
一「今も、自分の意見言うの、怖い時もあるけどね。でも、思ったより、自分を出すのは苦しかったり、怖いことじゃないんだって分かった」
あぁ、少しだけ冷静が戻ってきた。
言いたかったことは、これだ。
『…急に、どうしたの』
一「…俺はAちんのこと、流れてきた噂でいらないことも知っちゃって傷付けたのに、俺はAちんに、俺の事なんも話してないなって」
『そんなこと…別に、噂なんて気にしてないのに…』
一「ううん、俺が気にしてんの。だから俺も、俺ですら消したい過去を、話そうって思ったの。俺の事、知って欲しくて」
知って、くれるかな。
知って、俺の事、嫌いになったりしないかな。
自分のこと知られるのって、存外怖い。
『…私、三好くんのこと、今でもよくわかんないや』
一「えっ」
『…でも、…少しは、近しくなれた…と、思う』
一「ほ、ほんと!?」
『…三好くんも、人間なんだね』
一「ン!?俺ずっと人間だけど!」
『…ふ、そうだね』
風に吹かれて、Aちんが優しく笑う。
泣かせてしまったあの日から、ずっと俺にのしかかっていた重りが、するする溶ける。
『…じゃあ、私の話も、聞いてくれるかな』
一「うん…?」
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桜裡 - お久しぶりです。免許取得おめでとうございます!そして、更新ありがとうございます♪これからもご自分のペースで楽しみながら更新してくださいね!楽しみにしています♪ (2021年5月23日 10時) (レス) id: 7dcd5e0062 (このIDを非表示/違反報告)
彩奈 - この頃更新なさっていませんが大丈夫ですか?おこがましいですが続きが気になるので更新してください!お願い致します。 (2021年1月21日 20時) (レス) id: 1032255a07 (このIDを非表示/違反報告)
桜裡 - 名前をまさか誤字りました↓ (2020年12月30日 12時) (レス) id: 7dcd5e0062 (このIDを非表示/違反報告)
お売り - 免許取るのは大変ですよね…(経験者)。難しいこと沢山だと思いますが楽しみながら取得頑張って下さい!廉君のことがショックで私も暫くズーンてしてましたが、キャラが好きなのは変わりません!このお話もとても好きなので無事完結出来たら良いなと思って待っています。 (2020年12月30日 12時) (レス) id: 7dcd5e0062 (このIDを非表示/違反報告)
彩奈 - 続きです。だからこそ被害を受けた方ファンの方々にはそう簡単に許してはもらえません。今復帰するのも難しく廉さんの今までの努力が無駄になりました。廉さんにはまた頑張ってほしいですけど私は事務所と契約を切ったのは正解だと思います。長文失礼しました。 (2020年12月21日 21時) (レス) id: 1032255a07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこぺん | 作成日時:2020年11月8日 14時