捌 ページ8
さて、今年も西党はこの町の夏祭りの手伝いに回ることになっている。
忍であることを大っぴろげにはできないので、表向きは「謎の便利屋集団・西党」ということになっているのだ。
俺は一足先に祭りの会場に出向き、屋台の設営などを手伝った。
そこへ西党の面々もぞろぞろと現れる。ただし、桐影は腰が曲がっているので今日は家で留守番をしているらしい。
「ナカカゲ キョウ ガンバレ」
と、ロボ影が突然作り物のような手で俺の肩を叩く。
「え、な、何を......？」
「ハマチヨ サン ノ コト デス」
「�霎藺紂�？お、お前、なんでそれを＿＿」
「俺が言うたんや。すまんなぁ」
ろぼ影の後ろから、大きなお腹をした男が現れる。
「神影......見てたんか！！」
「あの時な、お店の中で、お団子食べててん」
心なしか、今も口をもぐもぐさせながら喋っている気がする。＿＿と思ったら、本当に手に何かお菓子のようなものを持っているようだった。
神影はにっこりと笑ったまま、俺の肩を叩く。
「西党みんなで応援しとるで」
いや、それ、今までお菓子食べてた手じゃないか。
なんだか複雑な気持ちにはなったが、それでもやっぱり、応援されているのだなあと思うと嬉しくなった。
＿＿それは、お客として？
�霎藺紊�言ったひとことが、さっきから俺の頭の中にずっと引っかかっている。
そうだ、�霎藺紊郎�から、団子屋の看板娘として、皆の人気者として、ここに来るのだ。
勘違いしてはいけない。
どんなに美しくても、どんなに可愛くても、それはまだ、俺のものじゃ、ない。
夕暮れ、祭囃子が鳴り始める。祭りの合図だ。
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作者名：伊予森 | 作成日時：2018年8月16日 20時
