【中影×濵千代】しだれ花火とイチゴ味 (ページ6)

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陸ページ6

どきん、と胸の奥を突かれたような痛みで、何か、にがく苦しい記憶のようなものが一気に蘇る。

気づけば俺は団子屋に駆け出していた。

「すみません！」

勢いよく団子屋に入ると、奥から濵千代の母親らしき女性が「あらあら、お客さん」と現れた。

「濵千代が、倒れたって聞いて」

俺が切羽詰まったように言うと、おばさんは「ああ」と口を開いた。

「暑さでくらっとしちゃったんだって。最近元気なさそうだったし、私たちが働かせすぎたのよ」

心配かけてごめんね、とおばさんが言う。

俺は心底ほっとして、肩を落とした。

「お見舞いしていくかしら？」

「あ......それは遠慮します。濵千代も、今は休みたいと思うし」

お客が部屋に上がり込むわけには、と付け加えたあと、なんだか悲しくなって、「そろそろ失礼します」と頭を下げた。

「そう？じゃあ気をつけてね。これからも贔屓してね！」

おばさんは明るく笑い、俺を送り出してくれた。

外に出ると、町にさっきまではなかった提灯が並んでいる。

俺はその時、そういえば明日は夏祭りなのだと思い出した。

気づけば八月も半ばを過ぎている。

もうすぐ、夏が、終わる。