拾壱 ページ11
どん。＿＿ぱらぱらぱら。
どん。＿＿ぱらぱらぱら。
空に花火が上がっては、細かい火花となって散っていく。
そしてまた、新しい花が咲く。それはこの夜が続く限り、途切れないらしい。
神社前の階段にふたり、そっと腰を下ろす。
�霎藺紊蓮�空に打ち上げられる花火を見上げ、時折歓声をあげている。
「ふふ。綺麗ね」
まったくだ。
俺は今、何よりも綺麗な花火のそばにいる。
その横顔を見ていたら、先程の震えている様子を思い出してしまい＿＿俺も無意識のうちに、ふと、
「俺の前ではもう、何も我慢すんなよ」
などと、きざな台詞を口走ってしまう。
�霎藺紊�ゆっくりとこちらを見る。花火が、驚いたようなその顔を鮮やかに照らした。
そして、俺の手に手のひらを重ねた。
俺が一瞬動揺して目線を手のほうに移すと、�霎藺紊呂罎辰�りと目を細め、うふと笑う。
そしてわざとらしく首をかしげた。
「ごめん。聞こえなかったの♡」
「あほ。ばっちり聴こえとったやろ」
�霎藺紊蓮△个譴拭�と不敵な笑みを浮かべる。
お客には絶対にしない顔＿＿俺が、今まで見たことのなかった顔だった。
＿＿まったく、恋愛が目的じゃない、なんて言っていたのはどっちだ。
そう呆れながらも、彼女を愛しく思ってしまう。俺は、ばかだ。
「あ、また上がった」その張本人は、隣で空を指さして嬉しそうに笑っている。
「暑いな。屋台でなんか買ってくるわ」
俺が何がいいかと問うと、彼女は顔をこちらへ向けて「かき氷、かしら」と笑った。
終わり
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作者名：伊予森 | 作成日時：2018年8月16日 20時
