彼のミルクティー。

#milky ページ47

.






「1年の時から、見てたよね。」



生徒会がない木曜の放課後。

今日は健人くんよりも、ゆりなちゃんが気になって
教室の窓からグラウンドを眺める。





「飽きもせず馬鹿みたいに。」


その声に隣を見ると、
グラウンドを見据える端正な横顔。


…いちいち腹立つ、この人。

けど、女子の中では私にだけ話しかけてくるから
嫌われてはないのかな、多分。






.








___ くしゅん、





急に隣からくしゃみが聞こえて
驚いて彼を見上げる。







「あ、ほら喋ってる」



何事もなかったかのように指差す彼の
頬はほんのりピンク。

いつも、顔色１つ変わんないのに。





.






健人くんにタオルを渡して
キラキラの笑顔を見せたゆりなちゃん。


お人形みたいに可愛いゆりなちゃんに
王子様みたいな健人くんが微笑み返す。






… ああ、お似合い。






楽しそうな佐藤くん。






本当は何を思ってるの？




本当は私と同じで、今、
胸が苦しいの？








____ へっくしゅ！！



また盛大にくしゃみをした
佐藤くんはズビ、と鼻をすすった。




.




「昨日の雨で風邪、引いたの？」


「違うし」


そう言った佐藤くんは、
本当は優しい人間だとおもう。





.






.






「佐藤くん、いこ！」


「え、」


佐藤くんのスクールバッグを掴んで
彼の胸に押し付け、急いで教室を出る。





「何かお礼する！」



私の言葉にめんどくさそうに
頭をかくけど、その目はちょっぴり嬉しそう。






世でいう美少年にあたる佐藤くんの手を掴んで
走ってる平凡な私を、ジロジロと鋭い目で見る女の子たち。





.








.






お礼、なんて表面上だけで、

本当は、お似合いな２人を見るのが
辛いから教室を飛び出しただけなんだと思う。



同じ境遇だろう佐藤くんに同情して。






.







.







その時はまだ、佐藤くんと健人くんとの
間に、何があったかなんて知らなかったし、
ただ、私と同じ、報われない恋をしただけだ、




…そう思っていた。








.







彼のミルクティー。 続

# 続編cm→←#milky

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す