壁の穴から (ybin) 1

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…



「あっ！ちょっと、そのお肉はまだです！くるすけ先生！！」


「え？いや、俺としてはこのくらいでひっくり返すのがベストだと思うけど！？」


「いや、この厚みはそうはいかないですよ！」


「違うね！あっ！！ちょっと！！トング返せ！！」


「ダメです！俺に任せてください！最高の焼き加減を皆さんに食べさせたいんです！！！」





…うーん。


焼き奉行が多い焼き肉は、めんどくせーなぁ。




ランチは、中島おすすめの、お洒落なグランピングレストランとかいうのに入った。

BBQと高級焼き肉店の間、みたいな感じだろうか。

テントが張られた半屋外みたいな席で、でかい鉄板のスペースがあって、うん、解放感があって気持ちいい。




光はというと、鉄板の片側でカンカン音をたてながら、本格的ガーリックライスを作っている。

ビュッフェコーナーから奴が取り過ぎてきた白米を材料にして。


すげーな、光、なんか高級鉄板焼のシェフみたいになっちゃってんな…。




「光すごいー」


皿にてんこ盛りにしたプチトマトをパクパク食べながら、奴が目を丸くしている。

気をよくした光が、ヘラをくるくる回してパフォーマンスすると、奴は更に喜んだ。

「スゴい！光、最高！！」



「はーい、お肉焼き上がりましたよー！」


…どうやら中島がトングの主導権を勝ち取ったらしく、涼介がブスくれている。


「わーい！お肉お肉ぅー！」


「今！今、この瞬間が一番美味しい時ですからね！あ、光くんも今すぐ食べてくださいよー！」


「えー、むりぃ」

両手にヘラを持った光がそう言うと、奴が、


「光、俺があーんしてやる」


と、言って肉を光の口に運んだ。


「はい、光、あーーーん」

とびきりの笑顔と一緒に、光の口許に肉が運ばれる。


「え、え、え」


「おいし？光？」


「う、うん…」





…光、何、顔真っ赤にしてんだよ。

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