〜誰がために〜 (×in)

42 Yabu 5/1 ページ42

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真夜中の仕事が終わり、車で家に送ってもらってる時。

「今日、何かあった？」
運転してくれてるマネージャーが言った。


…さすが。
楽屋から出た俺たちは、全員完璧だったと思ったのに。

俺たちの様子がいつもと違うと感じたんだ。


大丈夫だと伝えながら、全然大丈夫ではない自分の中の混乱ぶりが情けなかった。







部屋に入って、ソファーに体を投げ出して、長いため息をついた。



崩れてしまった。

俺たちのギリギリのバランス。



最後は自分から壊しにいった。


あそこで俺がゆうとの事を言う必要はなかった。




無かったことにはもう出来ない。
気づかないふりも、わからないふりも、もう出来ない。

…メンバー全員、巻き込んでしまった。




雄也は、何を言おうとしたんだろう。


収録が終わって、結局伊野尾が早々に、逃げるように帰っていって、話はうやむやになった。


俺も、誰とも目を合わせられなかった。


後悔とか、自己嫌悪とか、そんな言葉だけでは表し切れない。




でも、




伊野尾へ思いを伝えたことは、もう、悔やんではいない。

ずっと閉じ込めてきた思いが、俺という器の限界を越えて、ついに溢れた。

いつか、こうなるしかなかったんだ。




あの頃。
二人離れることを選んだのは、伊野尾の方。

俺は伊野尾の意思を尊重するふりをして、
でも本当は、更にはっきりと拒まれることが怖かっただけだった。



誰も知らなかった恋だから、

何も無かったことに出来たと思っていた。



でも、結局俺は、何一つ消化出来なかったんだ。
こんなに何年も、何年もかけて。




雄也は、伊野尾との関係が変わったとき、俺にだけ伝えてくれた。

それは、俺に対する純粋な信頼だったのか、それとも牽制も含んでいたのか、わからないけれど。

雄也がどれだけ真剣な思いで伊野尾の側にいるのかは、よくわかる。




わかった上で、俺は自分の思いを解き放とうとしている。


あんなに優しい雄也を、傷つけようと。








恋は、全部、エゴだ。

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