〜誰がために〜 (×in)

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俺のこと、伊野尾くんは割と色々知りたがる。

伊野尾くんに聞かれたことに俺がすぐ答えないと、彼は結構分かりやすく拗ねたりする。

そういうとこ、可愛いなって思う。

まあ、俺って正直者だから、あんまり内緒にしたりすることなんかないんだけどさ。



対して。


伊野尾くんが自分から俺に言わないことは、俺は知らなくていいと思ってる。


まあ、俺だけじゃなくて、前からずっと伊野尾くんはメンバーに対して秘密主義なとこあるから。


俺は、伊野尾くんが言わないことはわざわざ聞こうとはしない。


まあ、色々、怪しい、謎めいたとこ、あるんだけどね。

それでも、俺は恋人として、伊野尾くんのことは他のメンバーよりはよく知ってると思ってた。




でも、逆なのかもしれないって、最近思うようになった。


恋なんて、わからないから知りたいと思って近づくわけで。

何もかも知り尽くした相手に恋心が持ち続けられるかっていうと、また違うのかな。

周りの夫婦とかを見てると、そんな風に思ったりもするんだけどね。





朝、誰よりも早くに稽古場に着きたいから、俺は家を結構早くに出る。

だから、この間の伊野尾くんが何時頃俺の家を出ていったかなんて、知らない。

俺が出た後すぐかもしれないし、午後までゆっくりしてたかもしれないし。



俺が勧めたように、大阪の薮くんの昼公演を見に行ったかどうかなんて、俺は知らない。


…知らなくていいことだから。

確認なんか、しない。



伊野尾くんが何も言わないなら、俺は何も聞かない。



伊野尾くん、基本的に仕事でスケジュール埋まってるから、空いてる日は多くないし、いつも、何してるかなんてあえて聞いてない。





…それでも、この落ち着かない感情は、いつもと違う気がする。



伊野尾くんから連絡がないことなんてよくあることだけど。

既読無視だって珍しいことじゃないけど。





今日は、メンバー全員の仕事。

あの日から伊野尾くんと連絡はとってない。


ほんの数日。

そんな僅かな日数、連絡ないことなんてしょっちゅうなのに。






…伊野尾くんの、何かが変わった。

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