〜誰がために〜 (×in)

15 Takaki ページ15

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中学生の時、ママに連れられてオーディションに行ったら、そのまま雑誌の撮影に連れて行かれた。


俺は一発合格だった。


何だか解らないまま、ジュニアデビューしたけど、学校行くよりは楽しい、という程度の気持ちでやってるのが見えてたのか、俺はとにかく大人受けが悪くて、いつも怒られてた。

見た目より全然打たれ弱い俺は、怒られる度に辞めたいと思った。


嫌な事がある度に、俺の居場所はほんとはここじゃないんじゃないかって。

それは、デビューしてからも、ずっと。



俺は一生この世界にいる訳じゃないし。
そんな風に思ってた。
アイドルなんて、そんなに長くできるもんじゃないしって。


でも、俺が考えてたよりも仕事は長続きして、俺は逆に焦るようになった。


だって、俺の知ってる幸せな未来のかたちは、お姉ちゃんの家庭だから。

もっと言えば、俺自身が育った家庭だから。


子どもが何人もいて、騒がしくて、でも楽しくて、そんな家庭を俺も作りたい。


それが俺の夢、アイドル人生とは関係ない、俺が小さい頃から思い描いていた俺の未来だったんだ。





でも。



俺が伊野尾くんを好きになって。

伊野尾くんが俺を好きになってくれて。




もしも、俺が、お姉ちゃんちみたいな普通の家庭を作るとしたら、まずは…

伊野尾くん以上に好きになれる女の人に出会わなきゃいけない。





伊野尾くん以上に…？







…そんなに好きになったら、俺、死んじゃうかもしれない。









もしかしたら、俺は、ずっとこの仕事を続けていくんじゃないだろうか。


そう思い当たったら、これまでの、仕事というものに覆い被さっていたモヤモヤした霧みたいなものが、急にスッキリ晴れ渡って、全部の仕事が凄く楽しく感じられるようになったんだ。





伊野尾くんこそが、俺にとってのすべての答えだった。




伊野尾くんと俺との恋に約束なんかない。


未来も見えない。


だからこそ、今の瞬間の伊野尾くんにすがり付いていたい。




俺の伊野尾くん。


俺だけの伊野尾くん。



…絶対に、誰にも、渡さない。

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