〜誰がために〜 (×in)

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「ゆうとっ！！」

「うおっっっ」

後ろから走ってきたいのちゃんが俺に抱きついてきた。

「何、危ないなあ」

「ふふっ発表になったね舞台」

「あー」

「おめでとう」

前に回り込んできて、俺を見上げて微笑むいのちゃん。
その、あざとい表情にまんまとやられる俺。


「ありがとっ！」

「うおっ！？」

いのちゃんの腋の下に手を入れて持ち上げて、ぐるぐる回ってやった。

かっるいなぁ。

女の子みたい。





「伊野尾くん」


あ、たかっくん。


「こっち」

自分の座るソファーの隣を叩いて、いのちゃんを呼んでる。不機嫌な顔。

はいはい、お返ししますよ。彼女。

「たかきぃー」

嬉しそうな顔でたかっくんの方に歩いていくいのちゃん。
俺の方なんか振り向きもしないで。



最近、たかっくんのいのちゃんへの独占欲が半端ない。

そんなにあからさまだとバレちゃうよ。



…今日は、きっと「お遊び」のお誘いはない。

たかっくんに愛されるから。
目一杯、ね。

たかっくん、優しいんだろうな。

ちょっと見てみたいな。二人のえっち。





気紛れに、奔放に、色んな人に甘えて愛されて。

いのちゃんの周りは振り回されっぱなし。

たかっくん、気が気じゃないよね。

薮くんと付き合ってた頃の方が落ち着いてたと思うけど。




ずっと、ずーーーっと、子どもの頃から、いのちゃんを側で見てきた。

薮くんやたかっくんみたいに、くっついてる時離れてる時とかなく、ね。

…俺の方が、いのちゃんの事、わかってると思うんだけどな。




ケータイが震える。


『ゆうと、今日、遊ぼうよ』


たかっくんの隣でケータイいじるいのちゃん。



…このタイミングのお誘いはまず、無い、と思ったのに、意外。

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