上司と恥ずかしがりやの部下【中原中也】

16話 ページ17

貴方side(回想シーン)

私がここに来る前は、普通に働いていた

特になに不自由なく過ごしていた

実家にも月に一度は必ず帰っていたし、定期的に連絡も取っていた…

私は、こんな日々がずっと続くと思っていた……だけど…

そんな日々は、いきなり壊れてしまった…だれかが悪いわけじゃない

だれも…なにも悪くない…

ある夜、両親はいきなり姿を消してしまった

なにも告げずに…

私は約一週間泣き続けた

なぜこんなことになったのか

なにがいけなかったのか

仕事もやめて、一日中家にいることが多くなった

もう全て終わらせてしまおうかとさえ思っていた…でもやっぱり人生はそんなに……甘くなかった

ある日の夜、時間は何時ごろだっただろう…たしか…深夜の二時頃だった気がする

私は突然…猛烈に外に出たくなった

なにがあるわけじゃないし、なにか目的があるわけでもなかったけど、夜が私を呼んでる…そう感じた………けれどもそれは、私を呼んでいたのではなく、私を非日常へと連れ込もうとしていたんだろう…目の前の光景は、私を非日常に連れ込むのには、十分すぎるくらいだった

真っ赤な海がそこら中にできている

うめき声が聞こえる

声が出ない…

吐き気がする…

目が回る…

私自身が狂ってしまいそうだ…

そんな中に、たった一人…立っている人がいた…

みればその人は、中年くらいの男性で、右手にメスを持っていた…

怖い、恐い、早く…逃げろ！

私の脳内をその言葉ばかりがめぐった

その男性が目の前まで来たとき、私は…終わった…と思った

今から私は殺される…もう、生きることは出来ない…

そう思うと、とたんに涙があふれてきた

さようなら…お父さん、お母さん…

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