優しいお隣さん【電鋸男】

にじゅう ページ20

「あ〜〜あのねぇ、最近雪が多いから予約が1か月先まで埋まっちゃってるんだってさ。業者の人も大変ねぇ……だからこっちに来れるのは１か月先みたいよ」



＿＿＿と、大家さん。



「…………どうしましょう」



1か月、この状態の壁で生活＿＿出来ないことは無いだろうが、プライバシーもクソもないようになってしまった。



「こっちの責任です、本当にすみません……破壊してばっかりで」

「あぁいや……」



破壊してばっかりで、という言葉でそういえば早川さんも初対面の時に玄関のドアを回し蹴りで破壊したんだっけと思い出す。



「とりあえず、布か何かで隠しましょう」

「そうですね！」



タンスの奥のスカーフを引っ張り出して、画鋲で留めてみた。
一応、それでお互いの部屋同士が丸見えという状況からは脱したのだが＿＿＿＿



「あッオイパワー‼髪びっしょびしょじゃねぇか、拭けッちゃんと！」

「髪はたまにしか拭かん派じゃッ」



丸聞こえ、である。

隣の部屋の音がこんなに聞こえるという事は、同じくらい自分の部屋の音も聞こえているというわけで。

たまに歌う鼻歌も、零れ落ちる独り言も、全部筒抜け。
一人暮らしなのに一人暮らしな気がしないのだ。……とても落ち着かない。



「おい、静かにしろ！お隣さんに聞こえるだろ」

(……ごめんなさい、もう既に聞こえてます……)



落ち着かない気持ちを押さえつつ、早く1か月経たないかなぁと願った。

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