優しいお隣さん【電鋸男】

いち ページ1

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間違いなく今日は厄日だ。そうでなきゃ私がおかしくなりそうだから。

ただの厄日じゃなくて、人生で一回来るか来ないか級にレア厄日だと思う。




「厄日にレアがあってたまるか。ノーマルでも困るわ」




……なんて、自分で自分にツッコんでみたけど、面白くもなんともなくただ虚しい。



今、私には時間を確認する術も無い。自分の家の玄関先に座り込んでいる。



まず電車が大雨で遅延して会社に遅刻した。

遅延なのが憎い。いっそ運休してくれ、と何度願ったことか。


そして昼ご飯を食べに行った定食屋で服に思いっきり味噌汁をぶちまけられた。


帰る時間になっても大雨は止まず、傘はすぐに原形をとどめず大破して、びしょ濡れになりながら駅へと向かった。


残業でやっと乗れた電車の中、眠気に耐え切れず熟睡してしまい、その間に鞄を盗まれた。


何とか駅員さんに弁明して、交番に言った直後、３年付き合った彼氏に別れようと言われた。



＿＿＿＿＿そして、今に至る。



「……今夜は最強寒波、って言ってたっけ……ﾊﾊ」



カバンを盗まれたんだから、財布も鍵もない。つまり家にも入れない。

大家さんに合鍵を貰おうと思ったけど、すでに寝てしまっているようで一向に応答してくれない。



＿＿もしかしたら、私は今日が命日なのかもしれない！



あーお父さんお母さん。こんな娘で本当に申し訳ない。たいして親孝行もできてないのに。こんなことならもっと実家に帰っておくべきだった。

まぁそれなりに私は幸せでした。アーメン。……アーメンってどういう意味だっけ。



「いやいや、遺言はまだ早い」



死ぬと決まったわけじゃないし、遺言は書くなりして何か残さないと意味がない。



神様仏様。私、前世でなんかしたんでしょうか。




あ〜もう、血迷ってそれどころじゃない事ばかり頭に浮かんでしまう。

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