小説家vs.天才漫画家【JOJO】 (ページ20)

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過去の話ページ20

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「漫画化の話を白紙にしたい？」

岸辺露伴は不満なのを前面に押し出した声で告げられた言葉を反芻した。
目の前に座っているのはAの担当編集である佐々木で、自分の隣には泉京香が座っている。

なぜか今日は牧野Aが不在で、彼一人でここに訪ねてきたと思えば、眉を下げどこか不安そうな表情でそう言ったのである。

「本当に申し訳ありません……」
「で、でも、もうかなり話が進んでしまっていますし……牧野先生もあんなに乗り気だったのにどうして……？」

そうだ。
いきなりそんなことを言われても納得がいかない。

「こちらにも理由を聞く権利はあるんだろう？僕を納得させてくれ」
「はい、その説明をしに来ました」

佐々木は自身の鞄から一冊の雑誌を取り出し、付箋のあるページを開いて見せた。

「これは他社から出版されている週刊誌です」
「週刊誌？スキャンダルか？」

「いえ、牧野先生が何かしたというよりは、その身内についての記事でして……」

露伴は雑誌を手に取り、泉もそれを覗き込む。

『週刊文芸(集英社)を中心に執筆活動を続ける牧野A(24)。若き才能が活躍を続ける中、仄暗い身内関係の闇が明らかとなった。』

そんな書き出しで始まったその記事の内容を要約すると、彼女の叔父は昔漫画家をしており、週刊連載にまで漕ぎつけたが、段々と自分の思い描いていた漫画とはかけ離れたものを掲載せざるを得なくなっていく。

追い詰められた彼は連載を休むようになり、心配し様子を見に来た担当編集者を焼酎瓶で殴ったのだという。その後逮捕された彼は心神喪失ですぐに釈放され、今は入院中とのこと。

「……それで？どうして仕事を突っぱねることになるんだ？殴ったのは牧野Aでもなければ両親でも兄弟でもなく叔父なんだろう。関係ないじゃあないか」

「ちょっと、露伴先生……」

「はい、僕もそう言ったんです。先生の問題ではないし、気にすることはないと。でも牧野先生、その出来事が当時かなりショックだったようで、今は何か書ける状態じゃないと仰っていて……」

そこまで聞いて露伴は、やや前のめりになっていた姿勢を元に戻し椅子にもたれる。

そういえば次の連載で精神的に不安定な人間を登場させるために取材しようと思っていたことを思い出す。危険な好奇心がむくむくと膨れ上がっていくのを自覚していた。