【HQ!!】 聖夜の下で告白を――

縁下　力 ページ7

「ごめんね。私、転校することになっちゃった」


突然発せられた17年間一緒に居た幼馴染の言葉。
悲しそうに顔を伏せたAを見ても俺はかける言葉が見つからなかった。


「明日にはもう…会えなくなっちゃうんだ」

「…そう、なんだ」


涙を堪えるのに必死で他人事のようになる。
そんな気の利かない俺は本当に無力だ。


昔から二人でよく来ていた公園のブランコに腰を掛け、一人になった瞬間視界がぼやけた。
明日にはもう会えないなんて…もっと早く言ってくれれば…。
俺だって言いたいことはたくさんあるし、もっと一緒に居たかった。


「好きくらい言わせろよ…」


弱音を吐くといつも励ましてくれたAの声がすぐ隣から聞こえるようで俺は胸が苦しくなった。


またここで諦めるのか？
すぐ逃げるのか？
…決めたんだ、辛いことも悲しいことも受け止めるって。


俺は立ち上がって走りだした。
向かったのはAの家。
見慣れた車に見慣れすぎたAの姿。


「A！！！」

「力…？」

「俺は！離れててもずっとAのことが好きだから！諦めないって…逃げないって決めた！！」

「…私も好きだよ」


笑ってそう言うAの顔は一番綺麗だった。
強い風が吹き、風に乗って水が頬に当たった。
顔を上げるとその水はAの涙だと理解した。

泣くくらいなら行くなよ。
無理だとわかっていてもそう思ってしまう。

最後にAが告げた言葉は冷え込む外の空気に消えてしまいそうな程儚いものだった。



―――サヨナラ
君の最後の言葉、表情も全部…死んでも忘れない。

灰羽　リエーフ→←白布　賢二郎

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