いつか、きっと【伊吹藍】 (ページ9)

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温度ページ9

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組対の手柄となった今回の事件

伊吹がいつもより大人しかった。被疑者に対していつものように暴走することもなく、ただ冷めた目で、しかし瞳孔を揺らし何かに耐えているようだった。

密行も残すところあと半日。404は分駐所に戻って夕飯と仮眠をとる。

伊「志摩、俺っ、」

志「ああ、行ってこい」

井戸から彼女を引き上げて救急車で搬送したあの後、伊吹が彼女について話すことはなかった。志摩も伊吹に彼女について聞くことはしなかった。

伊吹がやけに冷静だった。普通じゃない。それどころじゃないことくらい分かっている。

詳細は帰ってからゆっくり聞くことにしよう、と志摩は伊吹を送り出した。

伊「っ、行ってくる！」

やっぱり早いな、と分駐所を走り去った伊吹を見てふと思う。

民家の戸を蹴り飛ばした始末書

今回ばかりは仕方ない

志「俺が書いてやるか、」

陣馬さんもいない

九重もいない

伊吹も出て行った

そんな部屋に1人、志摩の声がやけに大きく響いた。

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もう夜9時を回っていて、面会時間なんてとっくに過ぎているけど、ナースステーションで警察手帳を見せ、病室急ぐ。

ああ、俺警察官でよかった、なんて嘲笑する伊吹は病室前の警官に、お疲れ様ですと声をかけて中へ入った。

伊「A？」

報告は受けていた。被害者はまだ目を覚ましていない、と。

伊「間に合った、のかなあ？」

近くの椅子に座り、手を握る。

昼間に比べれば血色も良くなり、手も暖かい。それでもまだ冷たい。

伊吹は自分の熱が少しでも伝わるよう、優しく包み込んだ。

伊「変わんないなあ、Aは」

Aの右手首に並んだ２つのホクロがひどく懐かしかった。

伊「守ってやれなくて、ごめん。ずっと会いたかった。」

帰ってくることのない返事を待つことがどれだけ辛いか。伊吹はこの5年間、身を持って感じていた。

伊「もう離さないから」

手をぎゅっと握りしめ、額にキスを落とした。

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