いつか、きっと【伊吹藍】 (ページ13)

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嘘と現実ページ13

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志「それで？」

伊「言わないことにした」

志「はあ？」

伊吹のことを忘れてしまった彼女に、伊吹は何も言わないことを選択した。

否が応でも思い出させようとするだろう、と予想していた志摩は、相棒の発言に驚く他なかった。

伊「これ以上、Aを混乱させたくない」

そもそも、記憶喪失なんてテレビや小説の中の話だと思っていたのに

相棒の意外な行動も加わり、無理して笑う姿に何も言うことができなかった。

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三「A！」

東「よかったぁ、」

『東海林、ミコト』

はじめまして、と嘘をついてから数時間

いつかに運ばれた昼食も冷め切ってしまった

きっと解剖が終わって、所長が知らせてくれたんだろう。ミコトと東海林が駆けつけてくれた。

安堵した表情から、視線が机上へ、ちょっぴり悲しい表情へ変わった。

三「食欲ない？」

『なかなか、ね』

東「起きてすぐ食べろってのが無理なんだよ、大丈夫大丈夫！」

『ふふっ、ありがとう』

三「あ、そういえば中堂さんがね、」

ミコトと東海林のすごいところ。

何もなかったかのように、いつも通りでいられる

ついさっきまでの罪悪感も、後悔も、淋しさも

あれからどれくらい話しただろう

机上にあった昼食は看護師が下げていった。

これだけでも、と残されたみかんゼリーは「無理することないよ」と東海林が食べてしまった。

へへっと笑う東海林とミコトに、本当に救われた。

三「あ、神倉さんから電話だ」

そろそろ戻ってきて欲しいとの連絡。

東「ケチだな！」

今日くらいいいじゃないか！とジタバタしてみせる東海林を、ミコトが宥める様子が

なんだかUDIに戻ったようで

三「またくるから」

東「夜ご飯は食べられるといいね」

『うん、ありがとう』

2人の背を見送り、閉まるドアをみて深く息を吐く。

ああ、深い長い夜が始まってしまう。

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