29.ばか ページ29
キヨくんに会いたい、なんて口から勝手に出た言葉にキヨくんは電話越しに普段と変わらない声のトーンで少し嬉しそうに笑った。
『うん、待ってて。今行くから。』
カフェの大通り、この通りのシンボルとも言える大きい木の下にいる、とだけ言い携帯をしまう。
今行く、そんな彼の言葉がたまらなく嬉しくて、さっきまで雲に覆われてどんよりしていた空が、一気に晴れた気がした。
それから五分もしないうちに、
「久しぶり」
って大人っぽく笑うキヨくんが来た。
本日2回目のエプロンを着る。
お客さんはキヨくんしかいない。
店長には申し訳ないけど、今日、もう少しバイトしていってもいいですかって聞いたら、何かを察したように、もちろんって優しく返してくれて、邪魔しないようにするねって、従業員室に入っていった。
「…」
ほんの短い間会えなかっただけで泣きそうになるなんて、私、おかしいのかな。
「そんな顔すんなって」
またいつもの笑顔でポンポンって頭を撫でてから、キヨくんはいつもの席に座った。
「…」
「…じゃあいつものケーキとコーヒーで」
「うん」
ニコッと笑った彼につられて、思わず口元を緩める。
ふわふわしたこの感覚が嬉しいのか苦しいのかよく分からない。
「ほんとはさ、」
突然キヨくんが口を開いた。
「ほんとは、今日ちょっと色々考えたかったから、ここに来ようか迷ってた」
「…うん」
「でも、あんな震えてる声で俺の名前を呼ぶんだもん。行くしかねぇじゃん」
寂しげに、でも、どこか私を優しく見つめるキヨくんに少し胸がドキッとなる。
「ごめんな、Aちゃん。ずっと黙ってて…ごめん」
「…キヨくん」
「…俺はさ、実況者をやってて、楽しいし、何より人との繋がりが増えた。それに、俺の動画を見て笑ってくれる人もいるから、だから俺はこの仕事にやりがいを感じてる」
「うん」
「でも、それって人の価値観の違いもあるから、こういうのを悪く言う奴だっている。だから…「だからキヨくんは私にどう思われるのかが怖くて言えなかったの？」…」
こくり、とキヨくんが頷いたのを見てカウンターの向こう側のキヨくんの元へ足を向けた。
私に溜まっていたちょっぴりのモヤモヤと、キヨくんに向けての好きって気持ちが一気に爆発して。
「ばかっ、」
気づいたらキヨくんに抱きついていた。
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鳩ポッポ(プロフ) - 会社の休み時間に見ていたのですが、内容はもちろんのこと文章の書き方や表現がとても好きです！ドキドキしてしまって、平常心で仕事ができなさそうなので帰ってからじっくり読ませていただきます。とても素敵だったのでつい途中でコメントしてしまいました… (2018年3月22日 10時) (
レス) id: ac25a16587 (このIDを非表示/違反報告)
菜帆(プロフ) - まじめさん» コメントありがとうございます(*´∇｀*)ドキドキして貰えてよかったです。次回作も是非よろしくお願いします^ ^ (2017年8月27日 21時) (レス) id: 1fc7b90d65 (このIDを非表示/違反報告)
まじめ(プロフ) - 完結おめでとうございます！もうキヨの告白とかめっちゃドキドキしました(*/ω＼*)ｷｬｰ!!次の話も楽しみにしてます！！ (2017年8月27日 17時) (レス) id: db8a5ded20 (このIDを非表示/違反報告)
菜帆(プロフ) - reiponnさん» はい！是非またコメントして下さい(*´∇｀*)これからも応援よろしくお願いします！ (2017年8月25日 22時) (レス) id: 1fc7b90d65 (このIDを非表示/違反報告)
reiponn(プロフ) - 菜帆さん» 返信ありがとうございます！そうなんですか！嬉しいと言ってもらえて嬉しいです(*´∀｀*)できればまた話しましょうね！応援しています！ (2017年8月25日 17時) (レス) id: 61a6d8b17c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：菜帆 | 作成日時：2017年7月23日 20時
