ｰ２０(TH)ｰ ページ20
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腕の中で静かに寝息をたてて眠るAを見つめる。
以前より伸びた黒髪を指で梳いていると、彼女が目を覚ました。
「…ごめん、起こしちゃった？」
眠たそうにこちらを見る様子が可愛らしい。
頭を優しく撫でてあげれば、子猫のように頬を擦り寄せてきた。
ずっとこうしていられるな、なんて思いながら白く柔らかい頬を撫でたとき、急に目を見開いたAがベッドから飛び出した。
朝からアクロバティックすぎて驚く。一体彼女に何が。
様子を見ていれば、自分の服や下着を気にしているようだったのでなるほど、と察する。
昨日の夜、キスの最中にAはくたりと寝てしまった。
正確には気を失ってしまったのかもしれない。
終始心臓の音がすごかったし、緊張しすぎたのかも。
もちろんその後は何もしていないし、ベッドに運んで寝かせたけど、記憶が曖昧な彼女は不安になったのだろう。
警戒する猫のように離れたところからこちらをじっと見てくる。まあ、そんな様子も可愛い。
「大丈夫だよ。なんもしてないから」
俺がそう言うと、身体の強張りを緩めたAがてくてくとこちらに戻ってくる。
まだ横になっている俺に背を向けるようにしてベッドに腰掛けた。
そして、小さな声で「何もなくて良かった」と言う。
「……私、寝ちゃって覚えてないのかと思って…だから…」
そういうことかと思って、思わず後ろから華奢な身体をぎゅっと抱きしめた。
もう、本当に、すぐ可愛いこと言う。
ちゃんと起きてるときにしようね。忘れるなんて許さないから。
「今する？」
冗談で言ったのに全力で突き飛ばされたからもう2度と言わない。
＊＊＊
すっかり雪景色になった外を見つめて、Aが「もう少しでクリスマスだね」と言う。
今年のクリスマスは平日。お互い学校があるけど、夜に会う約束をした。
土日だったらずっと一緒に過ごせたのになと思いながら、俺はAの隣に並んで外を見る。
「A、もう俺の家に住んじゃえばいいと思う」
土日しか会えない今の生活は、ちょっと寂しい。
俺だけかな、そう思うのは。
「高校卒業したら、ひとり暮らしする予定だけど」
Aが、俺を見上げて笑顔を向けた。
「テヒョンがいいなら、一緒に暮らしたいな」
明るい笑顔に、俺もつられて笑顔になる。
2年後か…少し待ち遠しいけど。
君とふたり暮らしの約束を交わす。
「うん。一緒に暮らそう」
〈end〉
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作者名：naguno | 作成日時：2020年10月14日 20時
