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一瞬、頭の中が真っ白になって。
だけどすぐに頬にキスされたのだと理解すれば、頭がパンクしそうになる。
唖然とする私を見て、それまでずっと黙っていたテヒョンがようやく口を開いた。
「俺の気持ち分かっててそういうことしてるの？」
テヒョンの気持ちって、なに。
そういうことって、どういうこと。
「それとも無意識？」
ただでさえ脳内が情報処理出来ていないのにテヒョンの言うことが私を更に混乱させる。
そういうことと言うのは、隣に座ったこと、髪の毛を乾かしたりしたことを言っているのだというのはなんとなく分かった。
そんなに嫌だったのかな、と不安になる。
だけどそれなら、嫌だったのなら、どうしてキスされたのか分からない。
途端に目頭が熱くなる。
もしも彼に嫌がられたのだと思うと、悲しくなったのだ。
「ごめん…嫌だった…？」
彼に聞けば、真剣にこちらを見ていた表情が緩む。
「ううん。ごめん、ちょっと意地悪した。そんな泣きそうな顔しないで…」
困ったように笑ったテヒョンが、私を抱きしめた。
ふわ、と馴染みのある匂いに包まれる。
「いつもAから俺に近寄ってくることないでしょ。だから嬉しくてちょっと期待しちゃった」
なにを期待するの。疑問に思った私がテヒョンに聞く前に、耳元で彼の低い声が聞こえた。
「キスしてくれるのかなって。……俺だったらAが傍にいたらキスしたいなって思うし、触りたい」
耳が、熱い。
テヒョンの言葉に、鼓動が速くなる。
心臓の音が彼に聞こえてしまいそうで身体を離そうとするけど、彼の腕がそれを許してくれない。
「…好き。離れないで。傍にいて」
ぎゅうっと力強く抱きしめられて、身体が密着する。
「Aの心臓やばくない？」と少し笑ったテヒョンと目が合って。
ああ、もう逸らせなくなってしまった。
「…今度は頬じゃないけど許してくれる？」
いたずらっぽい笑みを浮かべた彼の唇が、私の唇に重なった。
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作者名：naguno | 作成日時：2020年10月14日 20時
