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寝ていたはずの父がいることにも驚いたが、自分がまだ下着しか身に付けていないことをすぐに思い出してその場に屈んだ。
「お、お父さんっ……私お風呂上がりだから…」
親子とは言え、さすがに恥ずかしい。
しかし咄嗟に口から出た言葉は父には届かない。
「ユナ、ここに居たのか…最近全然家に居ないじゃないか…心配だったんだよ」
"ユナ"。母の名前を呼んだ父は、私の背中をさすった。
素肌に触れた父の手のひらに、ぞわ、と鳥肌が立つ。
父が私のことを母だと思っている状態で、今のこの私の状況はかなり宜しくない。
このままベッドにでも連れていかれたら終わり。
それなら暴力をふるわれるほうがマシだ。
「お父さん、違う、私はお母さん…ユナじゃないよ」
しっかり声を張ってそう言ったはずなのに、怖くて声が震えた。
"ユナ"じゃないと否定をすると、毎回父は気が狂ったように私を拒絶する。
お前は誰なんだと。
だけど名前を言っても私のことは思い出してくれない。
「それなら出ていけ…ここは僕とユナの家なんだ」
父が手にしていたお酒の瓶を目にして、血の気が引いた。
「………お父さん…お願い、やめて」
父が振りかぶったそれで身体を殴られた直後、私の意識は途切れていた。
***
視界には洗面所の床が映った。
身体中の痛みだけはすぐに感じるのに。
なんとか身体を起こして近くに落ちていた携帯で時間を確認する。
深夜1時。そんなに時間は経っていないようだった。
どうやらショックからか、痛みのせいか、少し気を失っていたらしい。
左肩が痛くて動かせない。あの時瓶で殴られたのだと察したが、少しずれて頭に当たっていなくてまだ良かったと思う。
洗面所の床には瓶の破片が散らばっていて、洗面台の中にも落ちている。
洗面台の縁に若干傷がついている様子を見るに、恐らくそこにぶつかって割れたのだろう。
下着姿だったせいで破片による切り傷があちこちに出来ていてピリッとした痛みが走る。
今回は顔に傷は負わなかったが、その分身体中の傷が酷い。
「寒い…」
お風呂上がりに服も着ないで2時間経ってしまったせいで身体はすっかり冷えきっていた。
痛くて、寒くて、悲しくて、涙が滲む。
この痛みに、いつまで耐えればいいの。
「テヒョン…」
ねえ、私はもう、どうすればいいのか分からないよ。
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作者名:naguno | 作成日時:2020年10月14日 20時