ｰ１(TH)ｰ ページ1
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「123番でお待ちのお客様、お待たせいたしました」
番号を呼ぶとすぐにこちらに向かってきて、ぺこりと小さく頭を下げてトレーを受け取った彼女。
ハンバーガーショップだと言うのにトレーにはサイドメニューのサラダと飲み物しか乗っていないのが気になって、勝手にハンバーガーを乗せたくなる。
まあ、夜だし、女の子ならカロリーとか気にするのかも。俺なら絶対ハンバーガー食べるけど。
そんなベジタリアン(多分)な彼女は、21時を過ぎ、たむろしていた高校生たちが帰った頃にひとりでやってくる。
綺麗な黒髪と切り揃えられた前髪が印象的で、この時間帯によく見かける常連客。
あの子、夏の暑い時期でも長袖着てくるからちょっと暑苦しい。いや、俺には全く害はないし彼女の自由なんだけど。
いつもマスクをつけているため目元しか見えないが、若そうに見える。
しかし毎回23時頃まで店にいるので未成年ではないのかもしれない。
案外俺と歳が近かったりするのかも、なんてひとりで考えながらポテトを揚げている。美味しそう。
＊＊＊
お客さんが少なくなってきて手の空いた俺は、アルコール剤とタオルを持ちテーブルを拭いてまわる。
いつも通り奥の方の壁際に座っていた彼女は、何やらノートやプリントを出して勉強している様子で。
あ、やっぱり学生さんかと思いながら彼女の近くのテーブルを拭いていたとき、ふと、飲み物を飲むためマスクを外していた彼女の顔が目に入った。
左頬に、大きな白いガーゼか何かが貼られている。
ああ、怪我をしたんだろうな。普通ならそう思って終わるかもしれないけど、実は今までにも何度か見たことがあった。
彼女は高確率で左頬を怪我している。
もしかして虐待を受けているのか、と疑ってしまうくらい。
だけどその可能性は充分に考えられるものだった。
夏場でも肌の露出が少ない服を着ているのは身体の傷を隠すためなのだとしたら。
いつも遅くまでここに居て、家に帰りたくない理由があるのだとしたら。
「………」
赤の他人である俺が首を突っ込むことではないし、虐待を受けているのかだなんて軽く聞けるようなことでもない。
だけど彼女が気になる。
俺の思い過ごしであってほしい。
今はそう思うことしかできなかった。
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作者名：naguno | 作成日時：2020年10月14日 20時
