おとなりさん〈TH〉 (ページ10)

今日:18 hit、昨日:6 hit、合計:191,450 hit

ｰ１０ｰページ10

.

翌日、私は高熱を出して会社を休んだ。

一応病院に行って診てもらったが、結果は疲労による免疫力の低下。

先生に「ご飯ちゃんと食べてる？」と聞かれ、残業の日はまともに食べていなかったなと思い返す。

病院から帰ってきて、自分の部屋のひとつ手前で足を止める。
"606"と書かれたドアを見て、インターホンを押そうかしばらく悩んだ。

昨日のお礼を、伝えたかったのだ。

だけど悩んだ結果私はそのまま自分の部屋に戻った。

こんな真っ赤な顔でテヒョンさんに会ったら、変に気を使わせてしまう気がしたのだ。

あの日のカフェの帰り道も、昨日のことも、テヒョンさんは私を心配してくれての行動だった。

今の状態で顔を合わせれば、「どうぞ心配してください」と言っているようなものだろう。

ただの熱なら、2、3日もすれば治る。
元気になってからテヒョンさんに会おうと、そう決めた。

テーブルに置かれていたマカロンには小さなメモ紙が添えられていて、

『カギはポストにあります。お大事にしてください。隣のテヒョンより』

と書かれていた。

こっちでは敬語なんだな、なんて、そんなちょっとしたことでクスッと笑ってしまう。

マカロンを食べ終わってごみを捨てた後も、なんだかそのメモ紙は勿体なくて捨てられなかった。

＊＊＊

3日後、無事に仕事に復帰した私はデスクに溜まった書類に内心悲鳴を上げていた。

職場全体が忙しいこの時期、私が休んだ分の仕事が周りの人たちに分散されることはないので覚悟はしていたが、3日分の仕事を目の当たりにするとまた目眩を起こしそうである。

明日は休みだけど、家で1日中仕事をすることになりそうだ。

…いや、今日の夜から進めていかないと追いつかないかもしれない。

熱は下がったとはいえまだ本調子ではない。
しかしこの書類の山を前にあまり甘えたことも言ってられない厳しい現状。

トートバッグにパソコンと書類を詰め込んで会社を出ると、私は真っ直ぐあのカフェに向かった。

.