ｰ６(TH)ｰ ページ6
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閉店30分前のラストオーダーも終わり、キッチンの片付けをしていた俺はなかなか仕事に集中できないでいた。
「テヒョンくん、あの子大丈夫かな」
原因は、彼女である。
眠そうにしながらも一生懸命手を動かしていた彼女だったが、パンケーキを食べ終えてから、空腹が満たされたこともあってかついに眠気が限界を越えた様子。
カクンカクンと頭を揺らす姿はもう1人のスタッフも心配するくらいだ。
「…なんか帰り道が心配だよな。若いし可愛いし、華奢だから簡単に男に連れてかれそう。この辺出るからね、不審者」
物騒なことを呟くスタッフを横目に、まあでも確かにその通りなんだよなと溜め息をつく。
だからと言って俺が送っていきますってのもおかしな話で。
俺はただの隣人。
それに、彼女から見た俺の印象はかなり悪いはずだ。
初めて顔を合わせたあの日、ちょうど元カノからしつこく連絡が来ていた日だった。
その元カノに限らず、過去に何度か女性が家に押しかけてきたことがあった俺は女性に対して苦手意識を持っていた。
あのときドアの真ん前に立っていた彼女に驚き、もしかして今までの元カノのうちのひとりだろうかと疑って見てしまった。
だけどよく見れば全くの別人で、全然関係の無い彼女に嫌な態度をとってしまったことを後悔している。
翌朝会ったときの彼女は笑顔を向けてくれたが顔が引き攣っていたし、エレベーターから降りた後もぺこりと頭は下げてくれたもののそそくさと小走りで行ってしまった。
走り去る彼女の背中を見て思った。
間違いなく嫌われている。
だけどどうせ帰り道は同じで、最近この辺りが物騒であるのも事実。
あのときの罪滅ぼし……と言っても、彼女からすればこれも迷惑なことかもしれないけど。
「お客様、もう少しで閉店時間になります」
22時55分、首を傾けて眠ってしまっていた彼女の元に行きそっと声をかける。
ぼんやりした目をこちらに向けた彼女は、数秒固まった後俺を見て顔を赤らめた。
「す、すみませんっ、私、寝て……っ」
慌ててパソコンと書類を片付けた彼女は、会計を済ませるとまだ赤い顔のまま「ごちそうさまでした」と丁寧に頭を下げた。
そして外に出ようとドアノブに手をかけた彼女を呼び止める。
「ユンさん。少し、待っててくれませんか」
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作者名：naguno | 作成日時：2020年10月4日 12時
