ｰ１６(TH)ｰ ページ16
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「ボリュームがすごいですね…」
俺と同じ新作のハンバーガーを注文したAさんは、大きいハンバーガーを両手で持って凝視している。
既にかぶりついて食べていた俺は口がいっぱいで話せないのでうんうんと頷いた。
思い切りかぶりついた彼女の鼻の先と口の横にソースがついていて、思わず顔がにやけてしまう。
食べることに必死なAさんは気づいていなくて、笑っている俺を見て不思議そうに見つめてきた。
「ソースついてる」
指をさして教えると、咀嚼していた口をピタリと止めた彼女は顔を赤らめる。
拭き取った後も恥ずかしそうに俯いていて、ああ、可愛いなって、にやにやが止まらない。
もうすっかり彼女にはまってしまっていることは自覚している。
ここまで来ると自分のものにしたくなってきて。
だけど欲が出てくると、うまくコントロールできなくなるのが人間の怖いところだ。
＊＊＊
「結局テヒョンさん自分で払ってましたよね…ご馳走しようと思ってたんですが…」
「いいの、一緒に来てくれただけで充分だから」
時刻は13時。
新作を食べられて満足だけど、帰るには早いなと思う。
正直、まだ一緒に居たい。
「でも、お礼というお礼が出来ていない気が…」
ご馳走しようとしてくれていたAさんがしょんぼりしていたので、一緒に居る口実を作りたかった俺は彼女にひとつ提案してみた。
「じゃあさ、買い物付き合ってくれない？」
快く承諾してくれたAさんと駅近くのショッピングモールに向かい、色々なお店を見て回っていれば時間はあっという間に過ぎていく。
俺は気に入ったピアスを買い、Aさんも一目惚れしたらしいブラウスを買っていた。
夕日が沈む頃、マンションに帰ってきた俺たちは部屋まで並んで歩く。
帰ってきちゃったなぁと思いながら、6時間も一緒に居たことに驚いた。
やっぱり彼女の居る空間は居心地が良いんだ。
「今日はありがとうございました。お礼のはずが、すっかり私が楽しんじゃいました」
「俺も楽しかった。付き合ってくれてありがとね」
笑顔を向けてくれる彼女が愛おしく感じる。
窓から差し込む夕日が彼女を照らしていて、綺麗だった。
＿＿＿
ほとんど、無意識だった。
彼女の唇に自分のそれを重ねていて、柔らかな感触が離れたときには目を見開く彼女が視界に映る。
ほら、だから。
分かっていたのに。
コントロールできなくなる。
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作者名：naguno | 作成日時：2020年10月4日 12時
