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カフェに着きドアを開けようとすると、中からちょうど若い女の子2人が出てきたので道をあけて軽く頭を下げた。
私には目もくれなかった2人は可愛らしい格好をしていて、思わず自分の姿を見下ろしてしまう。
ブラウスに細身のパンツを合わせた仕事用のスタイルは、お世辞にもお洒落とは言えない。
服装を気にする理由など思い当たるものはひとつしかないのだが、頭の中を仕事モードに切り替えてドアを開けた。
いらっしゃいませ、と言う低めの声は聞き覚えのある声。
細身の身体にカフェエプロンが良く似合うその店員さんは、私の顔を見ると目をまん丸く開いた。
「Aさん。もう大丈夫なの？」
目の前まで来て両膝に手をつき私と目線を合わせたテヒョンさん。
整った顔があまりにも近くて、仕事モードに切り替えたばかりの脳内が危うくシャットダウンしかけた。
「はい。…テヒョンさん、この間はありがとうございました」
元気になって良かった、そう言ってにかっと笑ったテヒョンさんが、ぽんぽんと私の頭を撫でる。
びっくりして慌てて周りを見回すけど、入口の辺りはお客さんの席からは死角になっているようでほっとする。
テヒョンさんみたいなカフェの店員さんって絶対女の子に人気があると思うから、見られてたらどうしようかと思った。
焦った私の反応を見てテヒョンさんは「あ、ごめんね、つい」と小声で言う。
そう言えばベッドに横になっているときにも頭を撫でられたような……気がする。
ぼんやりしていたので少し記憶が曖昧だけど。
「今日も仕事していく感じ？」
「はい、そのつもりです」
「…それなら端の方が集中できるか」
席を案内してくれるテヒョンさんに窓際の端の席に通されて、水の入ったグラスとおしぼりが置かれた。
注文決まったら呼んでね、とメニューを開いて置いてくれた彼は、他のお客さんに呼ばれて対応に向かう。
メニューを見ながら、無意識にテヒョンさんの姿を目で追っては、はっとして視線をメニューに戻す。
何度かそれを繰り返しているうちに、他のお客さんに笑顔を向けるテヒョンさんを見てモヤモヤしている自分に気づいた。
接客なのだから、お客さんに笑顔を向けるのは当たり前のこと。
分かってはいるけど、どうしてこんなに気になるの。
このとき、それがやきもちだという自覚が無かった私は、この気持ちをどこにぶつければいいのか分からなかった。
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作者名：naguno | 作成日時：2020年10月4日 12時
