モブな恋。２【モブサイコ100】

SOS ページ6

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(律)



「お茶でいいかな」


自販機のボタンを押し、ペットボトルのお茶をゲットした僕は、早足でバス停のベンチへと戻る。


意外とベンチから自販機までの距離は長くて、思ったよりAさんを待たせてしまっているかもしれない。 急がなくては。


……しかし。


辿り着いたベンチには、誰もいなかった。



「え……？」


トイレにでも行ったのだろうか？

でも、Aさんなら僕が来るまで待っておく気がする。

「どこに行ったんだろう……」

すぐ戻ってくるといいけど……でも、妙に胸騒ぎがして落ち着かない。


ふと地面に目線を落とすと、道端に生えていた花が踏み潰されている事に気付いた。

さっきまでは、綺麗に花を咲かせていたのに。


まるで、誰かが争った様な痕跡だ。
それがAさんだったらと思うと、言い表せない不安感に襲われる。


しかも、その草が踏み潰されている場所は、薄暗い路地への入り口なのだ。


もしかしたら……。

僕の嫌な妄想かもしれない。 的外れな予想かもしれない。

怖くなった僕は、路地へと足を踏み入れた。



＊＊＊＊＊


「っー！ っー！」


口を押さえられた私は、声にならない悲鳴を上げる。


男達に連れていかれた路地の先には、人気の無い廃墟があった。

妙に空気が重く、ますます嫌悪感に拍車がかかる。


「てか、こいつ中学生くらいじゃね？ バレたらヤバくない？」

「ばーか。 そこがいいんだよ」

ニヤつく男達の会話を聞くと、背筋がゾッと凍る。


「こんな所に廃墟があるなんてラッキーだな〜」

「誰も来る気配ねぇから都合良すぎ」

男達は掴んでいた腕をパッと離し、私を埃まみれの床に放り投げた。

ようやく口が自由になった私は、力一杯叫ぶ。


「いやっ！ 誰か助けてっ！！」

すると男達は、イライラと私を睨んできた。

「誰も来ねぇって言ってるだろ」

「つーかジタバタ暴れるな！」

男達は私の体を押し倒し、一人が馬乗りになった。

「まぁ、すぐ大人しくなるだろ」

「早くやっちゃおうぜ」

そして、私の服へと手をかける。


嫌だ……っ！ 怖くて堪らないっ……！


助けて、と頭がいっぱいになる。

目から涙が溢れそうになるのを、ぐっと我慢する。 そんなの、この人たちに負けたみたいじゃないか。

でも、やっぱり怖くて。

ポロリと、目から一粒だけ、涙が落ちた。


それと同時に。


「Aさん！」


そんな声が、廃墟の入り口から聞こえた。

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