モブな恋。２【モブサイコ100】

霊幻さんなりに。 ページ32

「てなわけで、お前が珍しくジャージを着てきたのは丁度良かったってわけだ。 草むしりに最適だ」

「……それはどうも」


ジャージを着た理由なんて言えるはずもなく、私は素直に頷く。

「しかし、反対に……」と霊幻さんはモブくんへと顔を向けた。

「今日のモブは、やけにカッコよさげな服じゃねぇの。 それで草むしりは難儀じゃないか？」

「あっ。 モブくんが着てる服、私が選んだやつだ」

「う、うん。 そう、着てみた……」

恥ずかしそうに頭を掻くモブくんは、先日私が選んだ服を着ている。 私が考えた通り、よく似合ってる。


……ふぅん。 高嶺さんの前で着なくていいの？ せっかく買ったんでしょ？


ドクン、と心臓が揺れたと同時に、そんなドロドロした声が胸からこぼれ出た。


「やっぱりいいね。 モブくんに似合ってるよ」

私が微笑みながら告げると、霊幻さんも便乗してくる。

「確かに。 Aって結構センスあるんだな」

「む。 今度霊幻さんの私服も選んであげますよ」

「うぐぐ。 女子中学生に指導されながら服買うなんて、なんか複雑だな……」

頭を抱える霊幻さんが面白くて、私は思わず笑ってしまう。

「いいじゃないですか。 いつ行きます？」

「A、結構ノリノリだな！？」

こんな顔してる霊幻さんを買い物中見ていられるなんて、絶対楽しいじゃないか。

そう感じて話を広げようとすると、


「……あの、早く依頼人の家に行きましょうよ」


モブくんの少し冷えた声に制止された。

顔を向けてみると、声は冷えているというのに彼の表情は赤く染まり、どこか焦っているように見える。


「あ……ご、ごめん、モブくん！」

「ううん。 大丈夫。 ……でも、その時は僕も呼んでね」

「へ？」

「あっ、な、なんでもない」


ブンブンと頭を振って、モブくんは事務所のドアに駆け寄る。

「じゃ、じゃあ、早く行きましょう！」

「待て、モブ。 お前は別の服に着替えてからにしろ。 俺の貸すから」

「あ、あう……そうですね……」

ハッとしたモブくんは、恥ずかしそうにドアから離れた。


「……せっかく選んでもらった素敵な服だ。 大事にしないとな」

ぽつりと付け足された霊幻さんの呟きは、隣に立っている私だけに聞こえた。

モブくんに言っているように見せかけて、遠回しに私に伝えているんだろう。


霊幻さんなりに励ましてくれてるんだな……。


その優しさに、ほんの少し救われた気分になった。

対面→←関係ないじゃん

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