モブな恋。２【モブサイコ100】

あくまで、友だち。 ページ30

……それからの私は変わった。



「モブくん、このプリント後ろに回してくれない？」

「うん、分かった」

「よろしく」


モブくんに必要以上に話しかける事は無くなったし、

「…………」


彼を目で追いかける事もやめた。


「あ、Aちゃん。 肩に糸くずが付いてる。 僕が取るよ」

「ん？ あぁ、ありがと」


モブくんに触れられても、動揺せずに。

あくまで、モブくんの "友だち" でいる事に努めた。




そんな、ある日。


ショッピングモールを歩いていると、とある服屋でモブくんを見かけた。


「モブくん？」

「わっ！！ ……え、Aちゃん！？」

話しかけてみると、モブくんはビクッと肩を震わせて驚いた。

私は「こんな所で会うなんて珍しいね」と笑って、モブくんの手元に目を向ける。

「服を選んでるの？」

「う、うん。 そうだよ。 その、たまにはオシャレな服を着たいなと思って……」

「それって、高嶺さんに好かれるために？」という言葉が胸の奥で燻って、自分が嫌になる。


モブくんは困ったような笑みを浮かべて、周りの服を見る。

「本当は、花沢くんにどんな服が良いか聞こうと思ってたんだけど……」

「あぁ。 確かに、花沢くんなら格好いい服を選んでくれそうだね」

「うん。 けど、予定が合わなくて。 仕方なく一人で来たんだ」

…………。

「……よかったら、私が選ぶの手伝おうか？」

そう提案すると、モブくんは弾かれたように私に顔を向けた。

「い……いいの？」

「うん。 モブくんとは友だちだもん。 当然のことだよ」

「……そ、そうだね。 ありがと、嬉しいよ」


そう、私たちは友だちなんだ。


ちょっと前の私なら、「一緒に服を選ぶなんて、そんなの、デートみたいじゃん」と、無駄にドキドキしていただろうけど。

今の私は、なんだか落ち着き払っていた。


「じゃあ、お手伝いお願いしますっ」

「……うん」

「やった！」と言いたげに顔を輝かせるモブくんを見たら、「やっぱり今のナシ」と意地悪したくなる。

……だって、そんなにも高嶺さんのための服を選ぶことは嬉しいんでしょ？


「どういう服がいいかな？」

早速ウキウキと服を眺め始めるモブくん。

楽しそうだね、私とは違うね……。

嫉妬や焦燥が心の中をドロドロ渦巻く。


「……これとか、いいんじゃない？ きっとモブくんに似合うよ」


ほんと、何やってるんだろう、私。

高嶺さんのための服選びを手伝うなんて。

……馬鹿だなぁ。

関係ないじゃん→←捨てたいもの

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す