現在進行形ぼっちのあなたへ！【モブサイコ100】

喧嘩するほど仲が良いのか、仲が良いから喧嘩するのか ページ36

「何しようか？」

「大富豪しようよー！ 私好きなんだよね、大富豪」

「そうだね。 "大貧民" って楽しいよね」


…………。


和気あいあいとした雰囲気が、一気に静まり返った。


「……そっか、テルくんって "大貧民" って呼ぶタイプだったね。 思い出したよ」


私が目を細めて呟くと、テルくんは挑発する様な笑みを向けてきた。


「Aこそ、 "大富豪" だなんて偉そうに呼んじゃって。 結局ゲームの最後には大貧民になっちゃうのにさ」


…………。



古来より日本には、こんな論争が繰り広げられてきた


"大富豪" と呼ぶか "大貧民" と呼ぶか問題。


毎度ヒートアップするそれは……たとえ仲の良い幼馴染の間でも勃発するものだ。

お互い、「ここは譲れない！」とムキになっているのである。

ゲームをする前から争うなんて、人間というのは悲しい生き物だ。


……ちなみに、ここで「別にどっちでも良くない？」と言った場合、両者から怒られるという結末が待っているので注意が必要だ。


「だいたいさ、大富豪を目指してお互い頑張るわけでしょ？ なら前向きに "大富豪" って呼ぼうよ」

「このゲームの醍醐味は大貧民からの下克上だろ？ それを無くして楽しめないよ。 だから、敬意を持って "大貧民" って呼ぶんだよ」

「えー。 "大貧民" って呼ぶなんて、なんだか心が貧しそう」

「……A。 君は今、日本中の "大貧民" 派を敵に回したぞ？」


バトル漫画にありがちなバチバチとした睨み合いを繰り広げた私たち。



やがて、テルくんが口を開いた。


「……大人しく神経衰弱でもやろうか」

「……うん。 そうだね」


喧嘩もほどほどにしないと。


＊＊＊＊＊


「ぐぬぬ……テルくんの暗記力エグすぎない！？」

「ははっ、照れるな」


髪を搔き上げて得意げに笑うテルくん。

神経衰弱を始めて三十分。 勝負は早くも四回戦へと突入していた。


全部、テルくんの圧勝で。


一度めくったカードを全て暗記するテルくんに、平凡な頭の持ち主である私が敵うわけがない。


何か挽回策は……！と頭を捻っているうちに四回戦もボロ負けし、私は思わず地団駄を踏んだ。

「うぅ〜！ なんでっ！？」

ひたすら悔しがる私を、テルくんは妙に楽しげに見つめてくる。

そして、目を細めて呟いた。

「さってと。 罰ゲームは何にしようかな〜」


はっ！？ 罰ゲーム！？

お約束→←高そうなチョコにはご注意を。

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