ぼっちでも。 ページ30
私は少しくたびれた心を守るように、エクボに笑いかけた。
ぼっちでも笑われない。
ぼっちでも馬鹿にされない。
ぼっちでも陰口を言われない。
ぼっちでも恥ずかしく無い、そんな世の中を、私はいつも、心のどこかで夢見ていた。
エクボはなんだか強そうな悪霊だし、神になる事も不可能じゃ無い気がする。
そしたら、きっと。
「……あぁ。 やってやるよ」
私をジッと見つめた後、エクボは静かに返事をしてくれた。
*****
「ヒトミさん、なかなか起きないね」
「俺様が体を乗っ取った時の衝撃が長引いてるんだろ。 大丈夫、チャイムが鳴る前には起きるだろうから」
ふぅん。 そういうものなのか。
あ、そういえば。
「なんで、さっきエクボはポルターガイストを起こしたの?」
先程から胸に抱いていた疑問をぶつけると、エクボは何故か私から目を逸らして答えた。
「そりゃあ……なんとなく空を散歩してたら、窓からここの光景が見えてよ」
悪霊って散歩とかするんだね、という感想を喉の奥に押し込み、私はエクボの話の続きを聞く。
「そしたら女子高生が一人で責められてるじゃねぇの。それ見たら胸糞悪くなってよ。 なんか、ちょっかい出したくなったんだ」
「つまりは私を助けてくれたんだね? ありがとう」
「なっ……! ちげぇよ、そんなんじゃねぇ」
赤いほっぺをますます赤くして、エクボは否定する。
そんな上級悪霊の動揺している姿が面白くて、私は忍び笑いをする。
「エクボも人の事言えないじゃん。 お人好しだ」
「〜〜〜っ! ……たっく、勝手に勘違いしとけ」
エクボは恥ずかしそうに「ふん」と顔を背けた。
*****
「ん……んん…………え?」
「起きましたか? ヒトミさん」
目をうっすらと開いたヒトミさんに問いかけると、彼女は「えっ!?」とすぐに起き上がった。
そして、パチパチと瞬きをして周りの景色と私を見る。
「え……あれ?」
「あ、あのね。 ヒトミさん、十分前にいきなり倒れちゃったんだよ。 覚えてる?」
そう聞くと、ヒトミさんはフルフルと首を振った。
そりゃそうだ。 エクボに憑依されていたもの。
ポルターガイストの話は伏せて、私は話を続ける。
「そ、それでね、とりあえず寝かせといたんだけど……すぐに起きてくれて良かった。 えっと、頭が痛いとかはない?」
「だ、大丈夫」
未だに混乱した様子で答えるヒトミさんは、気まずそうに私に顔を向けた。
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オトナノジジョウ(プロフ) - ただのアニメ好き☆さん» 毎回素敵と言ってもらえるなんて……! ありがとうございます! ほんっとうに嬉しいです! これからも頑張ります! (2019年6月29日 12時) (レス) id: aad4b6e5d2 (このIDを非表示/違反報告)
ただのアニメ好き☆(プロフ) - 更新されるお話が毎回毎回素敵で本当に読んでいて楽しいです!更新お疲れ様でした!無理をなさらずにまた更新頑張ってくださいね! (2019年6月29日 10時) (レス) id: 4ee9350697 (このIDを非表示/違反報告)
オトナノジジョウ(プロフ) - 木の葉さん» こちらこそ、ありがとうございますー! 嬉しいお言葉です! もっとぼっちに優しい世界になるといいですね〜。 (2019年4月15日 7時) (レス) id: aad4b6e5d2 (このIDを非表示/違反報告)
木の葉 - ぼ、ぼっちに優しい…!!!!!ありがとうございますぅぅぅぅ(´Д⊂ヽしかもすっごく面白いです!これからも更新頑張ってください(*^^*) (2019年4月15日 6時) (レス) id: 927779d34a (このIDを非表示/違反報告)
オトナノジジョウ(プロフ) - ただのアニメ好き☆さん» ありがとうございます! とっても励みになります! おっしゃる通り、無理し過ぎず頑張っていこうと思います! (2019年4月14日 12時) (レス) id: aad4b6e5d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:オトナノジジョウ | 作成日時:2019年4月10日 23時