背中合わせの着替え ページ21
突然の告白に、顔が熱くなる。
よく分からないけど、ますます鼻血が出てきそうな感じがする。
「って、それどころじゃないね。 手当てしないと」
苦笑いを浮かべたテルくんは、ポケットからポケットティッシュを取り出し、私の鼻に当てる。
「こうやって小鼻を押さえて、少し下を向くんだ。 大丈夫、じきに止まるよ」
テルくんの微笑みに、安堵の思いが胸に広がる。
テルくんが来てくれなかったらどうなっていただろう。
彼に抱きつきたくなるけど、そんなの恥ずかしいし、照れ臭いし、第一鼻血だらけだから触れる事も出来ない。
でも、
「ありがとう」
精一杯の感謝を込めてそう呟くと、テルくんは「うん」と笑みを返してくれた。
*****
鼻血が止まった私は、急いで身の回りを片付ける。
手を洗い、雑巾で床を拭き、一滴でも血を残さないようにする。
「体操服は……どうしよう」
見た瞬間ギョッとするほど鼻血が染み付いた体操服を見下ろす。
この姿で体育館に戻るわけにもいかない。
「ちょっと待っててね」
すると突然、テルくんが上の体操服とジャージを脱ぎ出した。
「えっ!? ちょ、テルくん!?」
慌てて彼に背を向け、脱衣シーンを見ないようにする。
やがて衣擦れの音が止み、ぽんぽんっと肩を叩かれた。
「これ着て」
テルくんの裸を見ないように、顔だけ動かす。
すると、テルくんの体操服が差し出されていた。
「あ、ありがとう……」
お礼を言いながらそれを受け取る。
「……本当に着ていいの?」
「うん。 そろそろチャイム鳴るから、早く着ちゃって」
「う、うん……でも、テルくんは代わりに何を着るの?」
「僕は……向こうに干しているTシャツでも着ようかな。 ……よっと」
恐らく、窓から見える住宅街に干している洗濯物を超能力で取ったのだろう。
……ほんと超能力って凄い。
「……あの、テルくん。 ぜ、絶対に振り向かないでね。 見ないでね」
「あぁ、着替えるのかい? 振り向かないから安心して」
その言葉に、ホッと安堵する。 それと同時に、自分のセリフが自意識過剰みたいで恥ずかしくなってきた。
「う、うん。 だよね、なんか疑ってるみたいでごめん」
顔を熱くして謝りながら、急いで服を脱ぐ。
チャイムが鳴るまで、あと三分といったところか。
早く着替えないと……
テルくんは上半身裸で、私も体操服を脱いでいる。
何やら怪しい誤解をされるには、十分な状況だ。
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オトナノジジョウ(プロフ) - ただのアニメ好き☆さん» 毎回素敵と言ってもらえるなんて……! ありがとうございます! ほんっとうに嬉しいです! これからも頑張ります! (2019年6月29日 12時) (レス) id: aad4b6e5d2 (このIDを非表示/違反報告)
ただのアニメ好き☆(プロフ) - 更新されるお話が毎回毎回素敵で本当に読んでいて楽しいです!更新お疲れ様でした!無理をなさらずにまた更新頑張ってくださいね! (2019年6月29日 10時) (レス) id: 4ee9350697 (このIDを非表示/違反報告)
オトナノジジョウ(プロフ) - 木の葉さん» こちらこそ、ありがとうございますー! 嬉しいお言葉です! もっとぼっちに優しい世界になるといいですね〜。 (2019年4月15日 7時) (レス) id: aad4b6e5d2 (このIDを非表示/違反報告)
木の葉 - ぼ、ぼっちに優しい…!!!!!ありがとうございますぅぅぅぅ(´Д⊂ヽしかもすっごく面白いです!これからも更新頑張ってください(*^^*) (2019年4月15日 6時) (レス) id: 927779d34a (このIDを非表示/違反報告)
オトナノジジョウ(プロフ) - ただのアニメ好き☆さん» ありがとうございます! とっても励みになります! おっしゃる通り、無理し過ぎず頑張っていこうと思います! (2019年4月14日 12時) (レス) id: aad4b6e5d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:オトナノジジョウ | 作成日時:2019年4月10日 23時