恋人と友達は両立できない ページ3
私は生粋のバス通学派。
家から学校までは少し距離があり、自転車通学だと時間がかかりすぎるのである。
ゴトンゴトンとしたバスの振動を楽しみつつ、スマホを出してイヤホンに繋ぐ。
お気に入りの曲のボタンををポチッと押すと、聴き馴染んだメロディーが流れてくる。
名曲はいつ聴いても名曲だし、心安らぐ。
……あぁ、ぼっちでもこうやって楽しめるんだ。
ぼっちも案外悪くない。
ようやく味わえる至福の時間と、一日の疲れで、私の意識は遠くへと途切れていった。
*****
ぶちっ!
「っ!?」
ハッと目を覚ますと、そこはまだバスの中だった。
「ね、寝過ごした…!?」
慌てて時間を確認しようとすると、
「大丈夫だよ。 もう少しで着くから起こしただけだから」
「っ!?」
爽やかな声に、仰天しながら後ろを振り返る。
そこには、テルくんが私のイヤホンの片方をくるくると回しながら立っていた。
彼は楽しそうな笑みを浮かべて、からかうように目を細める。
「随分とぐっすり眠ってたね。 写真でも撮ってやろうかと思ったよ」
「なっ……テルくん!」
「その驚いた表情も悪くないね」
久し振りの会話に狼狽える私を気にせず、彼は話を続ける。
「でも、危なかったよ。 僕が乗っていなかったら、終点まで行ってたんじゃない?」
「う……起こしてくれてありがとうございます」
「よろしい」
満足そうに頷いたテルくんは、私の隣へと腰を下ろした。
「ちょっ、テルくん! 同じ高校の人が見てたらどうするの!」
空席が目立つバスで男女が並んで座るなんて、カップルですと言っているようなものだ。
「いないし、そんな細かく気にしなくてもいいと思うけどね」
確かにバス内にはいない。 でも、これは大事な事なのだ。
「駄目だよ! 私みたいなぼっちと仲が良いなんて、テルくんの評判に傷が付く!」
「Aがぼっち? 僕は友達じゃないのかい?」
そっと私の顔を覗き込むテルくん。
ちょっ、近い近い!
「あぁー……そっか。 恋人は友達にカウントされないのか」
「っっ! な、何言ってるの! 私たちは恋人同士じゃないでしょ!?」
「君の気持ちが変われば今すぐにでもなれるのに」
ふふっと、笑みをこぼす彼を真正面から見て、思わず動揺する。
「……ほんとに、なんで私を……」
一ヶ月前。 中学の卒業式のこと。
テルくんは、彼に告白する女子の大群を振り切り、私の家へとやってきた。
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オトナノジジョウ(プロフ) - ただのアニメ好き☆さん» 毎回素敵と言ってもらえるなんて……! ありがとうございます! ほんっとうに嬉しいです! これからも頑張ります! (2019年6月29日 12時) (レス) id: aad4b6e5d2 (このIDを非表示/違反報告)
ただのアニメ好き☆(プロフ) - 更新されるお話が毎回毎回素敵で本当に読んでいて楽しいです!更新お疲れ様でした!無理をなさらずにまた更新頑張ってくださいね! (2019年6月29日 10時) (レス) id: 4ee9350697 (このIDを非表示/違反報告)
オトナノジジョウ(プロフ) - 木の葉さん» こちらこそ、ありがとうございますー! 嬉しいお言葉です! もっとぼっちに優しい世界になるといいですね〜。 (2019年4月15日 7時) (レス) id: aad4b6e5d2 (このIDを非表示/違反報告)
木の葉 - ぼ、ぼっちに優しい…!!!!!ありがとうございますぅぅぅぅ(´Д⊂ヽしかもすっごく面白いです!これからも更新頑張ってください(*^^*) (2019年4月15日 6時) (レス) id: 927779d34a (このIDを非表示/違反報告)
オトナノジジョウ(プロフ) - ただのアニメ好き☆さん» ありがとうございます! とっても励みになります! おっしゃる通り、無理し過ぎず頑張っていこうと思います! (2019年4月14日 12時) (レス) id: aad4b6e5d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:オトナノジジョウ | 作成日時:2019年4月10日 23時