好きだから ページ20
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その後私は、保健室に行ってきなさいと先生に言われた。
心配そうにしている城山さんに「大丈夫」と手を振って、体育館を抜け出す。
誰もいない静かな廊下を歩き、保健室を目指す。
「なんかサボりみたいで楽しいなぁ」
少しにやけながら保健室に着く。
「すみません、鼻血が出ちゃって……って、あれ? 誰もいない」
保健室の中は無人で、呼びかけても返事が無い。
「無用心だなぁ」
そう思いつつ、もう自分で手当てをしようとティッシュを探す。
……しかし。
「あ、あれ? ティッシュが見当たらない……」
どこを探してもティッシュが無い。
え? う、嘘でしょ?
なんとか手を受け皿にしていた鼻血が、指の間の隙間を通ってポタポタと落ちてくる。
それは体操服に染み付き、床にも血が垂れ、なんだかプチ殺人現場とでも表したい光景だ。
ていうか鼻血ってこんなに止まらないものなの?
私貧血で倒れちゃうんじゃ無いの?
「貧血」と考えた途端、頭がクラクラとしてきた。
「え、嫌だ、嫌だよ。 鼻血出して失神するとか嫌だよマジで」
おろおろとティッシュを探して保健室内を彷徨うけど、本当に見つからない。
うう、トイレに行ってトイレットペーパーで応急処置でもする?
しかし、保健室からトイレまではかなりの距離がある。
しかも理科室の前を通らなくてはならない。 授業を受けている最中に血だらけの女が廊下を通るなんてたまったもんじゃ無い。
これなら城山さんに付いてきてもらうべきだった……!
このまま倒れちゃうんじゃ無いかという不安と、言い表し難い心細さが足元から這い上がってくる。
「だ、誰かぁ……!」
人気の無い校舎で、私の泣きそうな声は誰にも届かない。
……彼以外は。
「A……!?」
焦った声で保健室の入り口に現れたのは、私の唯一の幼馴染、テルくんだった。
「て、テルくん……?」
どうしてここに、と私が言うよりも早く、テルくんはこちらに駆け寄ってきた。
「鼻血だよね? さっき顔にボールがぶつかってたし」
こくんと頷いた後で、「あれっ」と思う。
テルくんは沢山の人に囲まれてたし、体育館の端っこで壁打ちをしている私の鼻血など、気づくはずが無い。
なのに、なんで知っているんだろう。
そんな私の疑問を見透かしたように、テルくんは恥ずかしそうに笑ってから答えた。
「……どうしても、気づいたら見ちゃうんだ。 Aの事を」
「っ………!」
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オトナノジジョウ(プロフ) - ただのアニメ好き☆さん» 毎回素敵と言ってもらえるなんて……! ありがとうございます! ほんっとうに嬉しいです! これからも頑張ります! (2019年6月29日 12時) (レス) id: aad4b6e5d2 (このIDを非表示/違反報告)
ただのアニメ好き☆(プロフ) - 更新されるお話が毎回毎回素敵で本当に読んでいて楽しいです!更新お疲れ様でした!無理をなさらずにまた更新頑張ってくださいね! (2019年6月29日 10時) (レス) id: 4ee9350697 (このIDを非表示/違反報告)
オトナノジジョウ(プロフ) - 木の葉さん» こちらこそ、ありがとうございますー! 嬉しいお言葉です! もっとぼっちに優しい世界になるといいですね〜。 (2019年4月15日 7時) (レス) id: aad4b6e5d2 (このIDを非表示/違反報告)
木の葉 - ぼ、ぼっちに優しい…!!!!!ありがとうございますぅぅぅぅ(´Д⊂ヽしかもすっごく面白いです!これからも更新頑張ってください(*^^*) (2019年4月15日 6時) (レス) id: 927779d34a (このIDを非表示/違反報告)
オトナノジジョウ(プロフ) - ただのアニメ好き☆さん» ありがとうございます! とっても励みになります! おっしゃる通り、無理し過ぎず頑張っていこうと思います! (2019年4月14日 12時) (レス) id: aad4b6e5d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:オトナノジジョウ | 作成日時:2019年4月10日 23時