必死な人ほどマウントを取る ページ18
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(テル)
「えー? 本田さんつれないなぁ。 お喋りくらいなら、よくしてたじゃないか」
そうAに声をかけると、彼女は「っ!」と肩を震わせてギギギ……と僕に振り向いた。
「花沢、くん……」
ぎこちなく僕の名字を呼ぶA。 思えば、初めて彼女から名字で呼ばれたかもしれない。
逆に言えば、僕がAを名字で呼んだのも、これが初めてだ。
お互い、ムズムズしているのだろうか。
「そ、そうだっけ? でも確かに花沢くん、色んな人に声かけてたからなー」
その顔には「戸部くんの前で話しかけて来ちゃダメでしょ!」と書かれている。
そんなAの切実な訴えを横目に、僕は「やぁ、奇遇だね」と戸部くんに微笑む。
戸部くんは「お、おう」とびっくりした様子で頷いた。
「中学の頃の本田さんは面白かったよ? 体育祭のリレー本番で……」
「ちょっと待ってそれ黒歴史!」
「他にもドジな所がたくさんあって……」
「もう、本当にやめてっ」
「二人とも、意外と仲良いんだな……」
戸部くんの口から漏れた一言に、Aはハッと彼の方を見た。
「ち、ちがっ……! これは花沢くんが勝手に言ってる事で……」
「おいおい、僕には虚言癖があるとでも言いたいのかい?」
「もう黙っててよっ!」
再び口論を始める僕たちを見て、戸部くんは心底面白そうに笑った。
「あはは、二人とも見てて面白いなー。 めっちゃ仲良さそうじゃん」
……よし、成功。 これでAと本当に仲が良い男子は僕だと見せつける事が出来た。
これで休み時間からの妙なモヤモヤは取れた。
内心スッキリとしていると、バスがプシューッと停車する。
「あ、俺、ここで降りないと」
そう言って、戸部くんは「じゃあね」と僕たちに手を振る。
そのまま降りると思いきや、彼はAへと顔を向けた。
「本田さんって面白いね。 明日からもっとお喋りしてもいい?」
え。
「え!? う、うん……い、いいんじゃない?」
Aの返事に、戸部くんは「なんで疑問形!」と笑って、今度こそバスを降りていった。
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オトナノジジョウ(プロフ) - ただのアニメ好き☆さん» 毎回素敵と言ってもらえるなんて……! ありがとうございます! ほんっとうに嬉しいです! これからも頑張ります! (2019年6月29日 12時) (レス) id: aad4b6e5d2 (このIDを非表示/違反報告)
ただのアニメ好き☆(プロフ) - 更新されるお話が毎回毎回素敵で本当に読んでいて楽しいです!更新お疲れ様でした!無理をなさらずにまた更新頑張ってくださいね! (2019年6月29日 10時) (レス) id: 4ee9350697 (このIDを非表示/違反報告)
オトナノジジョウ(プロフ) - 木の葉さん» こちらこそ、ありがとうございますー! 嬉しいお言葉です! もっとぼっちに優しい世界になるといいですね〜。 (2019年4月15日 7時) (レス) id: aad4b6e5d2 (このIDを非表示/違反報告)
木の葉 - ぼ、ぼっちに優しい…!!!!!ありがとうございますぅぅぅぅ(´Д⊂ヽしかもすっごく面白いです!これからも更新頑張ってください(*^^*) (2019年4月15日 6時) (レス) id: 927779d34a (このIDを非表示/違反報告)
オトナノジジョウ(プロフ) - ただのアニメ好き☆さん» ありがとうございます! とっても励みになります! おっしゃる通り、無理し過ぎず頑張っていこうと思います! (2019年4月14日 12時) (レス) id: aad4b6e5d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:オトナノジジョウ | 作成日時:2019年4月10日 23時