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秘密の関係 ページ8

「君が存在しないから、僕らは心の支えがなくなっているんだ。 きっと、君の世界の僕らは、君がそばにいるだけで前を向いて生きようと思えたんだ」


信じられない言葉の羅列に、私の頭はぐらぐらと混乱していく。


「そんなわけ……っテルくんも竹中くんも、自分の力で頑張ってきたんだよ。 私なんてそんな、おこがましい……」


「" テルくん "?」


「っ!」

ハッとして口をつぐんだ。 しまった、隠していたのに。

現実世界での私たちの関係を知られたくはなかった。 自分の醜さを見られるようで。

恐る恐るテルくんを見上げると、彼はなんでも見透かしたように微笑んだ。


「やっぱり、そうなんだね。 僕たちは特別な関係だったんだ」

「そ、それは……」


言葉に詰まる。 否定も肯定もできなかった。

黙りこむ私を見て、テルくんは「無理して話さなくていいよ」と気遣ってくれた。

「ほら、帰ろう」

いつの間にか立ちすくんでいた私に向けて、手を差し出してくる。


「……うん」


こくんと頷いてその手を取ろうとする。 けれど、私の手はスカッと空を切った。

「あ……そっか。 ごめん、花沢くん」

「謝らなくていいよ。 ところで、テルくんって呼ばないのかい?」

「うーん、それは、ちょっと」

現実世界と同じ呼び方をするのは気が引けた。 なんだか前の世界のテルくんに悪いような気がして。


「そうか」

「ごめんね……っきゃ!」


歩き出そうとした瞬間、急に足の力が抜け、私は地面に膝を着いてしまった。

「おっと。 大丈夫?」

「う、うん。 平気だよ」


恥ずかしくてすぐに私は立ち上がる。 テルくんは心配そうに目線を合わせた後、私に歩幅を合わせて歩いてくれた。


もう一度その手を触れられないことが、今更ながら悲しかった。



*****

(テル)


夢を見ていた。 昔から何度も見ている、同じ夢。

僕の隣には女の子が立っていて、朗らかに笑っていた。

彼女が笑っているのは分かるのに、その顔の造形は霧がかかったように捉えられなかった。


「……くん」


僕の名前を呼んで楽しそうに微笑む彼女を見ていると、ぎゅっと抱きしめたい衝動に駆られる。ひたすら愛しかった。

「……くん」


いつも見る同じ夢。

ずっと彼女と一緒にいられたらいいのに。

そう思ったところで、いつも目が覚める。

所詮夢は夢なのだと、僕を嘲笑うように。

所詮夢は夢→←この世界が辛い理由



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設定タグ:モブサイコ100 , 花沢輝気 , ぼっち   
作品ジャンル:アニメ
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オトナノジジョウ(プロフ) - 塩飴さん» ありがとうございます。更新がゆっくりすぎて申し訳ありません。 (10月6日 5時) (レス) id: aad4b6e5d2 (このIDを非表示/違反報告)
塩飴(プロフ) - ほんっっとに面白いです。更新待ってます。 (7月23日 22時) (レス) @page1 id: 0795a94fad (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:オトナノジジョウ | 作成日時:2023年6月17日 20時

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