5 ページ7
「愛花。」
なんで。どうして。聞こえるはずのない声が耳元から聞こえる。私以外誰もいないはずなのに私は抱きしめられている。怖い。
「こんなところで何してるの？ どうして勝手に入っちゃったの？ 好奇心に負けちゃった？」
「て、天さん･･････。どうして？」
怖くて振り向くこともできなかった。カチャリという音がして、鍵が閉められたとわかった。
逃げ場がない。どうしよう。
「震えてるね。可哀想に。ここに座って。」
「あっ･･････。」
引っ張られるままに指摘された場所に座らされる。
天さんは床に膝をつくと、私の両手をとった。
いつもは見ないような笑顔を貼り付け、ユラユラと私の手を揺らしている。
「知りたいことがいっぱいあるでしょ？」
私は黙って頷いた。
「僕が愛花を初めて見たのは君がまだ中学三年生のときだよ。その時はたまたますれ違っただけで、後に前の家と君の実家が近かったことを知ったんだ。最初はただ、弟に似てるなって思っただけ。でも、それが忘れられなかった。気付いたらこんな風になってたんだ。ファンや皆が知ったらどう思われるかな？でも、僕にはそんな事はどうでもいいよ。ファンは大切だ。だけど、それ以上に君が大切で、大事で、大好きなんだ。ううん、大好きなんかじゃ収めきれない。」
「･･････こ、わい。」
「だよね。きっと、僕でもこんなの見たら引くし、怖いよ。でも、僕は君が欲しかったんだ。本当は君と社会との関わりを全て切って、ここで一生どこにも行かず暮らしていけばいいって思ってる。けど、それじゃあ、あまりにも可哀想だから夫婦になれば、僕がそばにいれば大丈夫だと思ったんだ。」
気味の悪い笑顔により一層口角をあげ私を見つめる天さん。私が見ていた幻想は全て崩れ去ってしまった。
「･･････母にどうやって取り入ったんですか？」
「数年前に君のお義父さんが亡くなったでしょ？その時、君のお義父さんは借金を残していったんだ。保険金もおりただろうけど、相当の額があったからそれじゃ返せなかったんじゃない？」
「嘘･･････。そんな話聞いたことない。」
「だって、お義母さんは君に隠してたからね。君が苦労しないようにって。そこで、僕が借金の肩代わりをする代わりに愛花と結婚したんだ。」
「嘘だ･･････。嘘、嘘！！ そんな話し全部嘘だ！！」
母の苦労も思いも知らずただのうのうと生きていた自分が嫌になった。全てを否定したかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 42人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まるたちばな(プロフ) - レミーナさん» 難しかったですかね笑 そんなハッキリとしたオチというものはなくて、結局主人公は天から逃げられないし、天も主人公が周りと関係を持つならなんとしてでも切ると言った感じです？笑 (2020年1月20日 2時) (
レス) id: de1186ee03 (このIDを非表示/違反報告)
レミーナ - オチが掴めなくなった私はやばいのかも (2020年1月19日 22時) (レス) id: 1f3578b759 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まるたちばな | 作成日時：2019年7月7日 0時
