【ユーリ!!!】野球女と銀盤の王子2 (ページ40)

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早朝、勇利の両親に見送られ家を出たのは何時だっただろうか。

　空港ないのゲートをくぐり指定の飛行機が来るまで椅子に座って落ち着かない気分でコーヒーを飲んでいる。

「Aコーヒー飲むと飛行機の中で寝れないよ」

　私の横に座る勇利が注意してくれる。

「コーヒー飲んでないと落ち着かなくって……」

「飲んでても落ち着きないけどね」

　クレジットカード持ってるし空港のラウンジで休もうかと思ったが、長時間休める時間もない。

　それなら出国審査したすぐにでもラウンジで休憩すれば良かった。

　ずりずりとダレる心と身体。

「ヴィクトル～話し相手になってね」

　なんて言って甘えてみせると「俺が寝るまでならね」なんて言われた。

「はぁ～？話し相手になってくれるってこの前言ってくれたじゃん！」

　だから今から怖いと思っている飛行機に恐怖しながらも乗るってのに！

「それは言葉のあやだよ」

　なんて言って笑っている。

　……こっちは本気なのに。

「あ、勇利が本番前にすることをやって緊張をほぐせば良いんじゃない？」

「そ、そうだね……！」

　私は中四国大会で勇利に塗ってあげたハンドクリームの容器を手荷物検査時に入れた透明のビニールケースから取り出す。

「これ本当いい香りするよね」

　なんてヴィクトルは言っている。

「そうでしょ？でも季節限定だからなくなったら新しいの見つけなきゃダメなんだよねーもう一本買えば良かった」

　話しながらハンドクリームを手に塗り込む。

「Aは中国着いたら何をしたい？」

「うーん飛行機のことばっか考えてて何も考えてなかったなヴィクトルは行きたいとこあるの？」

　もとの透明なケースにハンドクリームを片付けながら言う。

「俺はショーロンポー食べたいかな？あと火鍋！」

「食べてばっかり！勇利は何かしたいことある？」

　食いしん坊なヴィクトルに笑ってしまったが勇利も一緒に観光できたらと思い問う。

「えっ、えーっと僕も何も考えてなかった……！」

「ホテルの近くって観光できる所あるのかなー？」

　ふと思い立ちスマホを取り出そうとしたら搭乗予定の飛行機の案内が始まった。

「あっ、」

「さ、A立って。行くよ」

　ヴィクトルに搭乗を促される。

「う、うーん……ていうか、私たちのエコノミーでしょ？だったら搭乗最後の方じゃん、もう少しだけゆっくりさせて……」

　私はすっかり手の中で緩くなったコーヒーをひとくち飲んで息を吐いた。