85 ページ36
リンクの中心に立つ勇利だけを見つめる。
昨日、ヴィクトルとジャンプの構成を変えるという話をしたけど大丈夫かな、緊張して強張った演技にならないかな？
心配で心配でたまらない。
ハラハラしている私を置いて行くように曲が流れ始める。
最初のジャンプのは四回転と三回転のコンビネーションだったっけ……
あれ？いつもと同じジャンプじゃん……
ん？私の勘違い……？それとも元の構成にするの？
何考えてるか分からないけど勇利の表情めちゃくちゃ硬い！
これヴィクトルと出会ったシーンだよね？
ははっ、表情硬すぎてすごい嫌そうな顔してるの笑える。
……予定では次は三回転のジャンプ、先ほどのコンビネーションジャンプは回転不足で四回転、二回転になった様子ではないし、この演技に気が入ってない表情を見ると四回転飛びそうな雰囲気……
ああっ、やっぱり四回転飛んだ！
……んん、手をついたかっ！
うはぁー スポーツ選手って本当言うこと聞かない人多いなぁ……自分も含めて。
ううっ、頑張れ勇利！
心臓いくつあっても足りないとはこの事だと強く実感する。
私は大きく息を吐いて心を落ち着かせてから、勇利に再び注視をする。
うん、さっき手を付いたのにそれを気にせずジャンプを跳べている。
次のジャンプもっ、あっ、惜しい！
はぁ、フィギュアスケートってこんなにハラハラするの？
でも、このハラハラが勇利から目を離させない。
最後のジャンプっ、上手くいくっか……？！
その瞬間リンクの塀に頭をぶつける勇利
驚いた私はバッと目を手で覆う。
痛そうというか確実に痛い。
そんな中最後まで勇利は演技をしている。
私は最後まで見なきゃという気持ちで手を下ろす。
やっと最後の決めポーズ……長かったぁ。
ポーズを決める勇利の鼻からは血が垂れている。
私は慌ててヴィクトルの手の内にあったマッカチン似のティッシュケースを取り上げてティッシュを何枚も取り出す。
早くこっちに来て！心配だから！
おいでと手を広げてポーズする呑気なヴィクトルに勇利は彼の名前を呼びながらリンクサイドに駆け寄ると「おっと鼻血〜」なんて言って笑顔でハグ拒否するヴィクトルとは対照的に私は慌てている。
「勇利、大丈夫？！鼻折れてない？痛くない？」
とりあえず鼻押さえて！と慌てている私にヴィクトルは言う。
「本当、Aは勇利に甘いなぁ〜」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 195人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かなぁ | 作成日時：2016年11月25日 14時
